神なんて!【13】
歳三の手を握ったまま俯いた斎藤に、ますます困惑する。握った手も微かに震えているし、今にも泣きだしそうな斎藤にどうしたらいいのか分からない。昔なら抱きしめ頭を撫でるくらいのことはしたかもしれないが、残念ながら今の小柄な体格では高校生の斎藤を抱き締めるというよりも抱きつくという感じになるし、セクハラだろう。
「…トシは、私の事をただの幼なじみとしか思ってないだろうが…」
か細く消えてしまいそうな声でそう話し出した斎藤に首を傾げた。何だかおかしい言い回しだ。この言い方は自分はそうではないかのような感じじゃないか。落ち着け、どうせ斎藤の事だ、『トシを本当の弟のように』とか続くんだ。
「私は…私は、トシが…トシが好きだ。」
「…えっ!」
驚きに素っ頓狂な声が出てしまった。だって、斎藤がマジで告白してくるとか有り得ねぇだろ!!
「すまない…いきなり、こんな年上から、告白されても困るのに…」
ぽろぽろと涙を流す斎藤に目を見開くと、慌ててハンカチを取り出すと流れる涙を拭いてやる。この様子だと、マジで弟としてという訳ではなさそうだ。マジか!!
「一姉ちゃん、俺も一姉ちゃんのこと好きだ。」
「…幼なじみとしてだろう?」
疑う斎藤に苦笑すると、そっと唇にキスをした。背伸びをしなければならないのが悔しいが仕方ない。
「幼なじみとかじゃなくて、女の人として好きだ。」
唇を押さえ顔を真っ赤に染めた斎藤に、きっちりそう告げると「…嘘だ。そんな、だって…え…」と斎藤はパニックを起こしていた。
「本当だよ。一姉ちゃんは、高校生だしガキの俺なんか眼中に無いだろうから、潔く諦めようと避けてました。ごめんなさい。」
斎藤の髪に手を伸ばし撫でると「好きだ、俺と付き合ってください。」と顔を真っ赤に染めた斎藤は、確かに「はい。」と言って頷いた。
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帰り道、照れ臭さを感じながら手を繋いで帰った。傍から見れば仲のいい姉弟に見えるだろうが、もうどうでもいい。
「実は…雪村に嫉妬していた。」
「え、千鶴に?」
驚きに斎藤を見上げると、気まずそうに目を逸らされた。
「トシが、初めて道場に連れてきた女の子だったし…あんまり仲が良いから…彼女だと…雪村には謝らないと。」
つまり苦手な訳ではなく、俺の彼女だと思ってあんな態度になってしまったと。可愛いな、こんちくしょう。って、待てよ、ってことは斎藤はその時点で俺の事好きだったってことだよな。え、いつから…。
「一姉ちゃん…」
「トシ…その、2人のときは、その呼び方じゃない方がいい…」
言いにくそうにそう告げる斎藤に、確かに彼女に『姉ちゃん』はねぇなと思った。でも、斎藤呼びは前に悲しそうな顔されたからな。
「…一?」
「…うん。」
ほんのりと頬を赤くしながら微笑み頷く斎藤が可愛くて内心で悶えながらも、歳三は「好きだ、一」と改めて告げた。
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