神なんて!【11】
卒業式当日。慣れない真新しい服に着心地の悪さを感じながら、教室に行けば親しい友人達は既に来ていた。やはり皆服に着られている感が否めない。そわそわと浮き足立った教室に苦笑しながら友人達の所にいけば、「トシはスマホ買ってもらった?」と聞かれた。卒業式の日に第一声がそれかよと思いながら、まぁ別な学校に行くヤツらの連絡先とかはいるもんな。
「明日、買いに行く予定。」
「そっかぁ。俺はとうとう買ってもらった!っーことで、俺のLINEのID教えとくから連絡くれよな。」
「おう。山本は、海桜中だっけ?頑張れよ。」
前々からスマホ欲しい!と騒いでいた山本は、漸く買ってもらったのが嬉しいのだろう、友人達に連絡先を配っていた。
「土方くん。僕もスマホ買ってもらったから、後で連絡先教えてもらってもいい?」
前野が穏やかに笑いながらそう言ってきたので、「おう。じゃぁ、買ってもらったら前野ん家に行くわ。」と告げた。
「こうして、みんなで騒ぐのも無くなるんだねぇ。」
「まぁな。でも、何だかんだで集まりそうだよな。」
イベント事にマメな山本辺りが集合掛けて何やかんややりそうだ。前野は別の中学に行くから、毎回は無理でも付き合いの良い奴だから無視したりはしないだろう。
「わぁ、もう皆来てたんですねー。おはようございます。」
「雪村さん、おはよう。」
「千鶴、今来たのか。」
千鶴にしては遅かったなと思っていると思っていると、千鶴は苦笑しながら「父が何度も写真を撮ると言って聞かなくて」と言った。なるほど、それで遅くなったのか。
「雪村さん、これ俺の連絡先!」
「はい。あ、スマホ買ってもらえたんですね!」
「そう!みんなと離れるからって、何度も親にお願いしてさー。」
良かったですねーと微笑む千鶴に、照れくさそうに笑いながら山本は言った。
「千鶴はスマホ買ってもらうのか?」
「はい。父が中学生で帰りも遅くなったりするだろうから必要だろうって。」
「そうか。俺も明日買うことになったから、教えるな。」
「はい!」
□□□□
式は滞りなく終わり、教室での最後の終わりの会をして終わった。千鶴と外に出ると振り返り校舎を見遣る。
6年間、通った小学校も今日でお別れかーと少し感傷に浸っていると母に「遅いわよ」と頭を叩かれた。解せぬ。
「あら、貴女はトシのお友達?まさか彼女!?」
「母さん、違うって。友達。」
千鶴を見てそう言う母に溜め息を付きながら、そういうと「えー、つまらない。」と不満そうに言われた。つまらないってなんだよ。
「もう、いいから帰ろうぜ。千鶴、親父さんは?」
「えっと、あ、いました。」
横で笑顔で手を振る千鶴にの視線の先には穏やかに笑う男性がいた。雪村綱道ではないようだ。確か前世でも育ての親だったか。鋼道は…。
「じゃぁな、千鶴。明後日道場で。」
「はい!」
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