神なんて!【10】


「斎藤と、距離を置こうと思う。」


学校の帰り道、隣を歩く千鶴にそう宣言すれば千鶴は驚いたように目を見開き「本気ですか」と言った。


「ああ、もうすぐ中学生になるだろ。今なら思春期だからで済ませられる。」


「それは…まぁ、そうかも知れませんけど、良いんですか?」



眉をへにゃりと下げ、そう聞いてくる千鶴に苦笑すると歳三はしっかりと頷いた。



「良いんだ。」



「トシくん…。」



意思の強さを感じたのだろう千鶴は何も言わずに歳三の手を取り慰めるように握った。手袋越しの温もりが暖かい。



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距離を取ると決めた歳三は、斎藤を避ける様に道場では千鶴の傍に居るようにした。元々付き合ってると誤解してる連中は微笑ましそうに見るだけで、何も言ってこない。休日は、なるべく友達と遊びに行ったりし出来る限り家に居ないようにした。少し性急過ぎるかとも思ったが、もうそろそろ小学校も卒業だ。中学生になれば部活やなんかで忙しくなり、自然と斎藤と会うのも少なくなるだろう。なら、それまで待てばとも思うのだが、そんな事を言ってるとずるずる行きそうな自分がいるのを自覚してるので、思い立ったら吉日ということで実行している。



「トシくんは中学に行ったら何の部活に入るんですか?やっぱり剣道部ですか?」


道場での休憩中、タオルで顔を拭いていると千鶴がにこにこと笑いながらそう聞いてきた。


「そうしたい気持ちもあるが、残念なことに剣道部はねぇから、別の部活だな。千鶴はどうするんだ?」


「そうなんですか。私も何の部活かは決めてません。もうちょっとで卒業式とか少し寂しいです。」


「ほとんどが同じ中学だけどな。まぁ、受験して私立の中学行くやつもいるしな。」



「そうなんですよねー。」



千鶴と話しながら、何か視線を感じると思ってそちらを見遣ると斎藤と目が合った。隣には総司と平助もいて何やら話していた様だが…どうしたんだ。



□□□□



「トシが一くんを避けてる?」


「まぁ、彼もそういう年頃だってことじゃない?」



「あー、思春期ってやつ?」


総司と平助の言葉に斎藤は寂しげに目を伏せると、「そうだろうか。」と呟いた。あの日から、急に避けられる様になった。やはり自分は嫌われてしまったのではないかと不安になる。



「そろそろ幼なじみに、しかも異性の幼なじみにべったりってのはなくなる年頃じゃない?むしろ遅い方だと思うけどなぁ、僕は。」



「うーん、それもそうだよなぁ。俺らより早く彼女作ったしな。」



「…。」


総司と平助の言葉に斎藤は雪村と楽しそうに話している土方を見遣った。



本当にそうなのだろうか。



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