loveprison【3】

一体何を考えているのか分からない。
それが斎藤のNo.23への感想だった。看守さえも「逆らうな」と忠告を寄こすくらいの男だ、どれだけ凶暴な男なのかと思えば、この男の独房で生活するようになって4日、特に何事もなく時は過ぎていった。正直、それが恐ろしいとも言える。


斎藤は、軽作業場で与えられた仕事を黙々とこなしながら周囲の好奇の目に晒されていることに苛立ちを覚えていた。仲の良い囚人などいなかった斎藤だ、周りも声を掛けづらいのだろう。ただ、こそこそと「まだ無事なようだな。いつまで持つと思う?」「俺は、1ヶ月」と人を賭け事の対象にしている声が聞こえて来て、作業する手も少し強くなる。


「ねぇねぇ、どうなの?No.23との生活は」


そんな中、看守に見咎められないようこそりと隣りから声を掛けてきた男がいた。チラリと睨む様に横目で見遣ると鳶色の瞳が好奇心を隠しもせずニンマリと笑っていた。


「…どう、と言われてもな。」


無愛想にそれだけ答えると「今の所、元気そうだけど、殴られたりした?」 と楽しげな声がすぐさま返ってきた。斎藤は眉間に皺を作りながら「…いっそ暴力でも振るわれれば納得も行くんだがな。」と、そっけなく答えた。


そう、暴力でも振るわれればこちらも防衛に動けるというのに、彼は話しかけてくる訳でもなく不気味なほど静かなものだ。こちらはいつ動くか気が気でなく気を張り詰めているというのに。


(びくびくしている俺を馬鹿にしているのか…。)



「ま…君、華奢だし簡単に壊れちゃうだろうねぇ。いつまで、この作業に出てくるのか楽しみだね。」


けたけたといった擬音が当てはまりそうな顔で笑う鳶色の男に斎藤は更に苛立ちを感じ、もう返事をすることをやめた。




□□□□


何をするでもなく壁に寄りかかっている男を眺め、斎藤は思い切って口を開いた。


「あんた、何者なんだ。」


斎藤の言葉に静かに目をこちらに寄越した男は、にっと口元を吊り上げ「何者といわれてもな。No.23ってぐらいだな」と肩を竦めてみせた。


「何故看守までも、あんたを恐れる。」


「さぁな。」


看守の事なんて知るかよと、言うと男はすっと立ち上がるとこちらへとやって来た。


「なん…っん!?」


いきなり乱暴に首元を鷲掴みにされると噛み付くようにキスをされ体が固まる。


「んっ…ふ…や…」


好き勝手に口内を荒らされ呼吸は上がり、無意識に男の腕に縋り付くよう囚人服を握り締める。



「は、とんだネンネちゃんが来たもんだな。」



馬鹿にするように鼻で笑う目の前の男を斎藤は悔しげに睨むもへたりこんでしまった。



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