loveprison【13】

土方歳三


それが本当にNo.23の正体だったとして、何故こんな所にいるのか謎は深まるばかりだった。勿論薬の副作用からくる妄言とも考えられなくもないが、そもそも何故薬などを投薬されているのかすら謎である。独房から出た斎藤に関係のない話ではあるが、どうにも気になってしまって仕方ない。だが、迂闊に調べて回れば怪しまれることこの上ない。 結局斎藤は何も打つ手なく、ただ独房に入れられる前と同じ生活をしていた。いや、1つだけ変わった事がある。


『んっ…』


斎藤は思わず漏れそうになった吐息を噛み殺すと小さく溜め息をついた。独房から出て3週間ほど、どうしても身体の奥が熱くなる時がある。それは決まってNo.23のことを考えているときで、抱かれていた時のことをふと思い出してしまうのだ。元々斎藤は性に関して淡白で牢屋での集団生活も苦ではなかったが、独房から出てからというもの毎日のように抱かれていたせいか溜まってしまって仕方ない。そんな悶々とする斎藤に「No.23とも散々やってたんだろ。俺ともやろうぜ」等ど言ってくる輩もいたが、斎藤はただ無視していた。そもそも自分はゲイではないと認識しているし、誰かに抱かれるというのを想像するのも苦痛だ。それなのに自分はNo.23のことを考え熱くしている。矛盾していることは分かっている。


「おいおい、聞いたか?アイツもうぶっ壊れたらしいぜ」


悶々と考え込んでいたところに、そんな声が飛び込んできてハッと我に返った。アイツとは、自分と入れ代わるようにして入っていった男のことだろうか。


「マジかよ、まだ一ヶ月も経ってねぇぜ。」



「前のが長過ぎたんだよ。前はそんなもんだったろ」



「確かにな。」



その言葉に自分に視線が集まるのを感じ斎藤な眉を潜めた。目立つのは好きではない。そもそも彼は他人を壊すような事をするといった実感が湧かない。確かに薬のせいで乱暴を働くが耐えられない程ではない。話してみれば理性的な面もある。どういう事だ?と訝しむ斎藤に再度看守から呼び出されたのはすぐの事だった。





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