loveprison【12】

「No.249出ろ。」


No.23との生活が半年になろうかという時、いきなり看守がやって来てそう告げた。斎藤は眉を潜めつつも大人しく従うと看守の後ろに顔色悪い囚人が立っていた。


「な、なぁ、あんた!どうやって生き延びたんだ!?教えてくれ!!」


「うるさい、さっさと入れ!」


看守は怯えた様子の囚人をNo.23の独房へ入れると斎藤へと向き直った。そして「お前は元の牢屋へ戻ってもらう。行くぞ」と告げた。


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どういうことだ?急な独房からの解放に謎は深まるばかりだった。斎藤は親指の爪を噛みながら、思考を巡らす。No.23の存在…奴は一体何者だ。それは独房へと入る前よりも深まっていた。


「無事生還したってのに浮かない顔だねー、君。」


「っ…お前。」


ハッと我に返ると目の前に鳶色のにやりとした男が立っていた。いつも軽作業で隣になる奴だ。


「にしても、どうやって乗り切ったの?」


にやにやしたチェシャ猫のような顔の男に眉を潜めた。この男の人を馬鹿にしたような態度は好きではない。確か、サイバーテロを起こして此処に収監されたと本人が前に言っていたが…。


「あんた…土方という名に聞き覚えないか?」


ひそりと男にだけ聞こえるだろう声色で尋ねると男はパチリと瞬きをし小さく首を傾げた。


「土方ねぇ。別に珍しい名字ってことでもないけど…有名なのは土方グループじゃない?製薬会社の。」


男の言葉に【土方】という名に聞き覚えがあったことに納得が言った。土方グループといえば国内トップの製薬会社で、貧民街の人間ですら知っているだろうという大きな会社だ。



「まぁ、でも、あそこも色々大変みたいだけどねー。何せ跡取り息子が行方不明らしいし。」


「そうなのか?」



「知らないの?当時は大きなニュースでかなり話題になってたけど。」


「…その跡取り息子は見つかったのか。」


まさかなと思いを抱きながら男に尋ねる。


「いや、まだな筈だよ。僕も興味があって調べたけど確か名前は土方歳三っていったかな。僕らより少し年上で何不自由なさそうな人で腹が立ったなー。」


くすくす笑う男を尻目に斎藤は目を見開き動揺のあまり固まっていた。


土方歳三


No.23が名乗った名前だ。



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