loveprison【10】

気にするなと言われれば人間、気になるもので。署長室から独房へと戻った斎藤は看守が居なくなるのを待ち、壁に寄り掛かりながら目を伏せているNo.23に聞くことにした。


「さっき、署長室に呼び出され、あんたが精神障害を患っていると言っていたが本当か?」


男はゆるりと目を開けると斎藤を静かに見遣り「らしいな。」と、どこか他人事のように答えた。その答えに斎藤は眉を寄せると更に言葉を続ける。


「らしい、とは。俺から見たらとてもその様にはみえないが。」


「そう言われてもな。俺も詳しくは知らねぇよ。」


「あんた、何をして此処にいるんだ。」


「15人連続殺人をしたんだと。」


ま、俺にはそんな記憶ねぇがな。と呟く男に斎藤はますます眉を潜める。全てが他人事で記憶がない。それは反省していないということなのか、それとも精神障害とやらが影響してるのか。


「俺は此処の記憶しかない。覚えてるのは呼び名らしきものくらいだ。」



「呼び名?」


「ああ…誰かが『トシ』と呼んでるのくらいだ。」


だから、此処に来る前の俺の事なんて知らねぇよ。という男に疑問しか沸かない。
ここの記憶しかない?どういう事だ。記憶障害?それで薬を飲む必要があるのか。


「まぁ、此処にいるのにそんなん必要ねぇだろう。」


肩を竦めそう呟くと男はまた目を伏せた。そんな男の様子に看守や署長の言葉に疑問がわく。確かに多少乱暴さがあるが普段は理性的で大人しい。おかしな事も言わない。むしろ薬の服用後可笑しくなっている。何故、と斎藤の心には疑問だけが残った。



□□□□


斎藤は男に組み敷かれながら男の顔を観察する余裕があるのに気付いた。いや、もう薬が切れかかっているのだろう、男の動きは丁寧に斎藤を快楽へと導き乱暴さはどこにもない。


「んっ、あっ」


男の瞳も焦点はしっかりとしており理性的だ。斎藤は男の背中に爪を立て絶頂を迎えながら男には何かがあると感じていた。



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