運の悪い女と運の良い男【5】


困惑したまま山南に流され頷いた斎藤が出ていった部屋では、土方が見るからに不機嫌となり重たい空気を醸し出していた。



「山南さん…あんた何考えてやがんだ。」


土方の低い声を物ともせず山南は笑顔のまま「おや、良案だと思いますけどね」と答える。


「まぁまぁ、歳。山南さんだって良かれと思っての事だし、悪い事ではないさ。」


苦笑しながら近藤に宥められ渋々土方も怒りを和らげる。それを目を細め見ていた山南はゆるりと口を開いた。



「彼女、今度のヒロインそのままなんですよね。未婚のまま子供を産んで一人で育てて苦労している所とか、いい練習になると思いますよ。」


「だが…」


顔を顰めたまま渋る土方に山南は「先程の彼女の態度で何となく分かったと思いますが、貴方の容姿や地位にキャーキャー言って近付いてくるような女性とは真逆のタイプです。ですから、安心してかまいませんよ。私的にはそろそろ身を落ち着けて欲しいので、本気になってもらっても面白いから構いませんが。」と朗らかに笑いながら告げた。



「…俺のためとか言ってるけど、あんた…ただ面白いからってのもあんだろ。」



「おや、分かりましたか」


嫌そうな土方も何のその、山南は「というわけで頑張って下さいね。」と宣告したのだった。



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「まぁま、どーったの?」


「どーったの?」


同じ方向にそっくりに首をコテンと傾げる千鶴と薫に呼ばれハッと我に返った一は、「いや、何でもない」と二人の頭を撫で溜息をついた。


携帯にはあの土方からのメッセージ…



本当に、どうしてこうなったのだろうか。



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