運の悪い女と運の良い男【19】
「そういえば、大丈夫なんですか?一緒に出掛けたりして…」
車から降りた斎藤が心配そうに辺りを見回すのを、苦笑しながら見遣ると「大丈夫だ。髪型を変えて眼鏡を掛けるだけで大分印象は変わるもんだし、保険に帽子も被ってるしな。」と答える。
それに事務所は(というか山南は)バレても構わないと言っていたのだからいいのだろう。
「どーぶちゅえん!まりーちゃん!」
「どーぶちゅえん!ちっぷ!」
いや、それ場所違うと内心ツッコミを入れるくらい余裕はある。幸い平日なこともあり、そこまで人は多くないしそんな心配することもないだろう。
斎藤は千鶴と、土方は薫と手を繋ぎながら入場ゲートを潜ったのだった。
一通り見て回り、ライオンの檻で二人が怖がって泣き出すというハプニングは起きたが、それ以外は順調に過ぎている。
お昼は斎藤が作ったお弁当を食べ、まったりと過ぎていく。というか、今すぐ寝たい。気持ち良すぎて寝たい。
「ひーしゃん!うさしゃん!うさしゃん!」
「ひーしゃん!うさしゃん!」
双子がひょこりと膝に飛び乗り騒ぐので、寝るわけにも行かなくなったが。
「すみません…。ゆっくりとしたかったでしょうに。」
我が子達の暴挙に驚いて止める隙が無かった斎藤が、溜め息をつくので苦笑しながら「覚悟してたから、気にするな」とひらりと手を振った。
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