運の悪い女と運の良い男【12】
「あ、ひーしゃん!」
「ほんとら!ひーしゃんよ、まぁま!」
TVを見ていた二人が「はーく!」と騒ぐので洗濯物を取り込む手を止め行ってみると、確かに土方がTVに写っていた。どうやら教師役らしい彼は、しっかりスーツに身を包み教師然としていたけれど、どうにも容貌が教師にしては整いすぎてると思うのは偏見だろうか。
確か、教師と生徒の密かな恋愛を描いたドラマでバイト先の同僚達が騒いでいた気がする。教育上よろしくない場面があったらまずいのでチャンネルを変えたいが、こうも夢中になって見られていると泣かれる。絶対に泣かれる。
(あくまで学園ものだし、そこまで危ないのはないはず…)
そう願うと一は洗濯物を取り込みに戻った。
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「ひーしゃん、ちゅーちてたね」
「どんってちて」
撮影が終わり、まだ七時前だったので斎藤に連絡してから行けば、着いた早々に双子がにこにこしながら爆弾を投下してきた。
流石にどう返していいのか分からず助けを求めるように斎藤を見遣れば困ったような顔で「その、土方さんの出でる学園ドラマの再放送を見たので」という回答が返ってきた。
ちゅー、ちゅーとくるくると土方の周りを回ってきゃっきゃと笑う双子に土方は遠くを見るしかなかった。
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