【5】
何かある気がする、そんな思いが日に日に強くなっていく一は、はぁっと溜め息をついた。学校生活も、まぁ慣れつつあるし問題はない。ただ親…特に母が帰るたびに何かを期待するかのように『今日はどうだった?』と聞いてくるのが不審でならなかった。まだ幼かった小学生の頃なら兎も角、転校初日を除いては最近ではあまりそんな風に聞いてくることもなかったのに。一の心に、この学校に入れられたのは何か理由があると思わせても仕方ないと思う。
(なのに、聞いてもしらばっくれるし…)
母への不満を胸に自席につくと、次の授業の支度をしようと机の中を覗くと何やら一通の封筒が入ってるのが見えた。一は眉を寄せ取り出すと封筒を眺める。宛名は確かに自分。前の音楽の授業のため教室を移動する前は入ってなかったから、授業中に入れられたのだろうが、果たして何だろう。
封筒を開けると1枚の便箋が入っており、昼休みに第三音楽室まで来て欲しいと書かれていた。
正直に言おう。心当たりが無さすぎて不安になる。しかも第三音楽室といえば、校舎の端にあり普段はあまり使われていない教室だと聞いた。怪しい…。
(いや、でも例のS4とやらには関わっていないし、変な言いがかりをつけられる理由はないな。)
まず、リンチのようなものはないだろうと思い少しホッとして肩の力を抜いた。
□□□□
昼休み、用事があると抜けた一は少しばかり緊張しながら例の第三音楽室までやって来ていた。
コンコンと小さくノックをしてドアを開ければ…。
「……失礼しました。」
ドアを開けたら、例のS4とやらの一人がいました。え、どういうことだ?と咄嗟に閉めたドアを見遣り、間違えてない事を確認する。
(ど、どういうことだ?あれか、新人にたいするイジメか!?)
ぐるぐるとパニックになっているとドアが開き強引に腕を引かれ中に入れられた。そして無常にもドアはパタリと閉じた。
ポカンと腕を掴む男を見上げる。黒髪の紫色の瞳の男は、なるほど騒がれる理由も鈍い一さえ分かるほど美形だと思う。少し、目付きがキツイがそれも魅力的に見えるイケメンパワー。
で、
(何で、こんな事になってるんだ!?)
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