【14】

「まぁ…幼い頃に結婚の約束をして再会だなんて、とてもロマンチックですわね」


「ほんとに、素敵ですわ」


まるでおとぎ話のようで素敵ねと、一の話に頬を染めて語り合う友人達に一は恥ずかしさに身を縮こませた。実際は、そんな大層なものじゃないのだが…。


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パーティーから3日たったが、てっきり呼び出しや何かしらの嫌がらせがあるかと危惧していたが、予想に反して何事も無く穏やかに日々は過ぎていて、周りの目も落ち着きもしや唯の取り越し苦労だったかと少し力が抜けた一だった。



放課後、図書室で本を借りようかと歩いていると中庭で四つん這いになって何かを探している女子生徒を見掛けた。


(何か、大事なものをなくしたのだろうか…?)



あまりに必死な様子に気の毒になり手伝おうと目的を変え、中庭へと向かう。


(しかし、廊下から直接中庭に出れるのは便利だが、冬は寒そうだな。)


何とも不思議な構造にやはり金持ちの考える事は分からんと溜め息をつく。



「何を探してるのですか。手伝いますよ」


一の言葉にハッと顔を上げた女子生徒の顔を見て驚きに目を見張る。


(この子はハロウィンパーティーで沖田のパートナーだった子ではないか。)


鳶色の大きな瞳をまん丸にしてきょとんと見上げてくる顔は幼くて可愛らしい。


「あ、でも悪いですし、大丈夫です。」


わたわたと慌てふためきながら「そんな対した物でもないですし」と遠慮する彼女に、一は眉を潜め「必死な様子で探していたのに、それは説得力がないですよ。いいから、手伝います。」と押し切った。



「あ、ありがとうございます。あの、黒猫のチャームなんです。」



「分かった。」





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彼女…雪村千鶴というらしい。一緒に探している間に色々と話をしたが同じ一年だったらしい。双子の兄と揃いのチャームを落としてしまったらしい。


「仲が良いのだな。」


ふっと笑みを零せば雪村は照れたように笑い「薫は意地悪ですけど、でも優しいんです」と言った。


「私は一人っ子だから、羨ましい。」


そう言って手前の芝を掻き分けると、コロリと小さな黒猫のチャームが出てきた。



「あったぞ!」


「わ、ありがとうございます!!」


手渡せば、本当に嬉しそうに泣きそうになりながら黒猫のチャームを握り締める雪村が何度も頭を下げた。


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