【10】

「斎藤さんは、どなたとパーティーに参加されるの?」


にこにこと笑いながら問われ一はぎくりと体が強ばるのを感じた。物凄く答えにくいが、嘘は付きたくない。


「…その、婚約者がこの学園にいたので…」


「まぁ、斎藤さんの婚約者!どの様な方なの?」


悪意の欠片もなく笑顔の彼女達に一は追い詰められた気分だった。一は口元が引き攣るのを感じながら「お、幼馴染みで…」とだけ答えるのがやっとだった。



彼女達の中にも婚約者と参加する者もいて、そうでない者たちも皆、楽しげで一はぽつんと置いてきぼりの気分を味わったのだった。






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パーティー当日

煌びやかな会場に、華やかなドレスの女子生徒達に洒落たスーツの男子生徒。見ただけで場違い感を感じ回れ右をして逃げ出したくなったが、残念ながら隣に土方が居たので叶わなかった。


「な、ドレスで良かったろ。」


「…はい。」


くつりと笑いそんなことを言ってくる土方の言葉に素直に頷く。これでは下手な安物では悪目立ちしそうだし、制服なんてもっての外だ。


それにしても視線が痛い。
まだ会場に入っていないというのに、皆が皆こちらを見てくるし何かをコソコソと言っているので余計に怖い。



(休み明け…いや、生きて帰れるだろうか…)




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