destiny【13】
「ねー、剣道部においでよー」
「あんたも、しつこいな」
次の授業までの休み時間、これで何度目になるか分からない誘いを総司が持ち掛けてきた。強くなろうと決めてから、必要以上にΩであることを嫌悪しないように前向きに受け入れようと試みてきた。持って生まれたものは仕方ないと、ほんの少しではあるがΩであることを受け入れつつある。それは雪村の言葉や原田が色々とサポートしてくれたり、態度の変わることのない友人、そして土方のおかげだと思う。過剰に心配するようなこともなく、だけれど斎藤が落ち込んでいたりすると、土方は何も聞かずに頭を撫で、頑張りを褒めてくれる。それがとても嬉しかった。
「あーあ、一くんがいたら面白いのになぁ。平助以外相手にならないんだもん。」
ちぇっと唇を尖らせ拗ねている総司に溜め息をつくと、「たまになら相手になろう」と妥協するくらいには、自分の中に余裕が出来ていると思う。
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「ああ、だから総司のやつ浮かれてたのか。」
風紀委員の活動報告を出しに土方の元へ行き、たわいもない雑談をしていた折に、つい剣道の相手になると言ったと話したら、土方が納得がいったというように笑った。
「まともにアイツの相手が出来るのなんてお前くらいだしな。むしろ、勝ってアイツの鼻っ柱をへし折ってくれ」
などどさえ笑いながら言う始末だ。普通ならαである総司にΩがなんて、他であれば鼻で笑われて終わりだろう。でも土方や沖田など、ここの教師や生徒はそんなことを気にしないで対等に扱ってくれるし、認めてくれる。その度に薄桜学園に進学したことが間違いではなかったと思わせてくれる。
「やるからには負けません。」
勝つ気満々の斎藤に土方はますます笑みを深くすると「頑張れよ」とポンッと肩を叩いて激励を贈る。
土方としては、斎藤ほどの腕前だ。正直そのまま剣道部に入部してくれると喜ばしいと思っている。それは総司や平助なども同じだろう。特に顧問の新八なんかは事ある毎にそう公言しているくらいだ。
(まぁ、本人次第だがな…)
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