destiny【11】
久々に頭が血が上って本気で目の前にいる生徒を殴りそうになったのを、何とか抑える。彼は適切な処分を与えることになるが、今は斎藤が優先だと処分を待つよう伝え追い出した。
「斎藤!」
「っ…見ないで下さい」
拒絶するように膝を抱え俯き震える斎藤に、思わず足を止めるが直ぐに歩を進め抱き締める。腕の中で強ばる体に痛々しさに眉を顰めると、ポンポンと背を宥めるように叩くと、次第に小さな嗚咽が聞こえてきた。
「ぅ…どうして…」
どうしてΩになんて産まれたのだろう
微かに聞こえてきた声に、土方は無意識に強く斎藤を抱き締めた。その声があまりに悲痛なもので土方の心に突き刺さった。
□□□□□
斎藤を襲った生徒は退学となった。とは言え、問題が解決したとはいえない。斎藤の心の傷が直ぐ癒えるわけもなく、本人は隠しているようだが常に気を張っている様子で人との接触に怯えが見える。
「はぁ…参ったなぁ。これじゃぁ、受け入れるどころか、自身を拒否しちまうぜ。」
眉を寄せ難しげに項垂れる原田に土方は、「どうにかならねぇか」と問う。
「こればっかりはなぁ。いっそ運命の番が現れれば楽かもなぁ。」
ガシガシと頭を掻きながら溜め息まじりに零された原田の答えに不快感が募る。斎藤に運命の番…それが酷くカンに障り気に食わない。
(って…これじゃ、嫉妬じゃねぇ…か…)
降って湧いたように出てくる想いに自覚せざる得なかった。
(おいおい、マジかよ…)
土方もまた頭を抱え、大人二人が頭を抱えて唸るというシュールな光景が広がっていたが、幸いにも二人しかいなかったので目撃されずに済んだのだった。
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