【5】


両親が勝手に旅立っての問題は直ぐに持ち上がった。食事をどうするか、だ。一応、簡単なものなら作れはするがレパートリーはあんまりない。何より面倒だ。だからといって、カップ麺だのコンビニ弁当は流石にこれから成長期を迎える子供に毎日食わせるのは気が咎める。自分自身でも、それはねぇわ、飽きるわ、という感想しかわかない。

「…女は呼びたくねぇな。」



土方が頼めば嬉々として作ってくれそうな女性は何人か心当たりはあるが、それで彼女面されて面倒な事になるのも嫌だ。



(せめて、今流行りの家政婦でも雇ってくれよ…)


頭を抱え溜め息を付く土方を、ちょこんとソファーに座り大人しく本を読んでいた一がトンっと軽く音を立てソファーから降りると、躊躇いがちに土方に寄ってきた。



「…どうかしたんですか?」



不安を滲ませた顔に土方は小さく舌を打つと、一が小さく肩を震わせたのに気付き内心溜め息をつく。つい癖で町で寄ってくる奴等と接する時と同じ様に舌打ちしたが、子供しかも馴染みがなければ怯えても仕方ないことかと、これから気を遣わねばならない生活を思うと、どうしても溜め息がでてしまう。



「いや…お前、食えない物はあるのか?」



「…特には。」


そう首を傾げる子供の頭にポンッと手をのせると、「とりあえず炒飯にでもすっか。」と呟いた。








大雑把に野菜を切って、適当に味付けて作った炒飯はそこそこ上手くいった。


静かな空間で昼食をとっていると土方のスマートフォンが着信を告げた。



スマホの画面には友人の名前がでかでかと出ている。



「…なんだ。」



『お、何か機嫌わりぃな。今日の夜、海までバイク走らせよーぜってなったんだけど、来るだろ。』



「あー…そうだな…いや、今日は止めとく。お前らだけで行ってこいよ。」



断りを入れ通話を切ると、漸く一が食べ終わったころだった。






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