【17】

「うげっ…」


「人の顔みて、それは失礼じゃないんですか、土方さーん?」


小生意気な顔でニヤニヤと笑うと鳶色の髪をした子供…沖田総司の姿を校門で見つけた土方は、げんなりとした顔で溜め息をついた。

原田と話をしたからか?噂をすれば影を実行してくれたのか、このガキは。

また、何を企んでるんだか…。


「で、今度は何を企んでんだ。」


そう呆れた声で言ってやれば、総司はきょとんとした顔をし、すぐにむっとした顔になった。


「何ですか、ソレ。別に何も企んでませんよ。失礼だな。」


むぅっとしながらも土方の後をついてくる総司に、溜め息をつくと歩調を遅くする。


「じゃぁ、何だってんだ。お前が、わざわざ高校まで来て。」



「うん…。土方さんはさ、自分の言葉がきっかけで、おかしな事になったことある?」


「あ?」


何だそれは、と振り返って見ると総司はしょんぼりとした様子でランドセルを握り俯いていた。


(何だ。こいつが、こんな落ち込んでるなんぞ、珍しい事もあるもんだ。)


「…何があった。」


溜め息をつき、ポンッと総司の頭を撫でてやると珍しく素直にされるがままになっていた。

(明日は雷か?嵐か?)


「…最近、僕のクラスに転校生が来たんだ。大人しくて真面目そうな子でね…何となく苦手なタイプだなって、僕はあまり話しかけなかったんだけど…。それでね、クラスの子に何で?って聞かれて『嫌いじゃないけど苦手なんだ』って答えたの。別に誰でも苦手な人、合わないなって人っているでしょ?なのに、気づいたらクラスの皆がその子の事を無視するようになっちゃって。僕、そんなつもりなかったんだ。なのに…どうしたらいいの?」


泣きそうに顔を歪ませる総司の言葉に、土方はもしやという思いが過る。


「…だったら、その子に素直に謝ってお前が話しかけてやればいいじゃねぇか。」


とりあえず落ち込む総司の頭を撫でると、帰るぞとだけ言って歩き出した。




「総司…その転校生、何て名前だ。」


「斎藤一くんだけど、斎藤くんがどうかしたの?」



ぶんぶんと勝手に土方と繋いだ手を揺らしながら総司の答に土方は頭を抱えた。



(まさか、イジメにあってるとは…。)




next

- 17 -
[*前へ] [#次へ]
戻る
リゼ