【15】
お兄ちゃん
その言葉に違和感と照れ臭さを感じながらも、土日はそれなりに一と交流を持った気がする。
土方は一人っ子で、あまり親戚付き合いをする両親ではなかったので当然ながら「兄」などと呼ぶ相手などいなかった。
最初はどう接したものか、実は困惑していたのだがちょこちょこと自分の後をついてきて、隣にちょこんと座ってる姿を見ると、何だか可愛らしくてついつい構っていた自分がいて驚いた。
弟がああいうものだとしたら、とんでもなく狡い位置だろう。
「土方さん、次の現国自習だとよ。」
「ん、ああ…そうか。」
ピラピラと持っていた課題を1枚土方に渡すと、原田は前の席に土方と向かい合うように座った。
こういうのはさっさと終わらせてしまうに限ると二人はスラスラとシャーペンを走らせる。
「そういえば、一くんだっけ?上手くやってんの?」
思い出したように聞いてくる原田に土方は手を止めると、「まぁ、弟がいるとこんなんなのか?と思う程度には上手くいってんじゃねぇか。」と答えると、シャーペンをしまった。どうやらもう課題は終ったらしい。
「へぇ。結構、可愛がってるんだな。小2だっけ?」
「ああ。」
「…総司とタメか。もしかして同じクラスだったしりてな。」
愉快そうにケラケラ笑う原田に対し、土方は眉間に皺を作ると「そうか…アイツも同じ小学校だったか…。」と頭を抱えた。
いくらアイツでも俺と関わりがあるからって、標的にはしないだろうが…些か不安になる。
あのくそ生意気な子供は全力で俺で遊んでくるから、何をするかわからねぇ。限度も知ってるだろうしイジメなんざしねぇだろうが、あの真面目で大人しい性格の一が総司の相手が出来るとは思えねぇ。
(とりあえず一にはそれとなく聞いて注意しとくか。)
真剣に考え込む土方を眺め、原田は「土方さんって、ちょっと抜けてるとこあるよなぁ」と苦笑していた。
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