リヴァイさんの光源氏計画D
「いや…ここまでくると引くよなぁ」
「だよな。しかも記憶ねぇのに、性格とかそんな変わってねぇとかマジウケるわwww」
隣にしゃがみ込み同じように教室を無表情で眺めるそばかすの男の子ユミルと顔を見合わせエレンは小さく溜息をついた。
数日間、リヴァイや訪ねてきたエルヴィンやハンジ達に構われいざ保育園に入園してみれば、見覚えのある顔ばかり。
『エレン、おはよー!久しぶりね!』
『よう。』
にこにこと相変わらず女神な笑顔で出迎えたクリスタと無愛想に片手を上げて簡単な挨拶をしてきたユミルに、エレンとリヴァイもポカンと口を開けて見つめてしまった。
(ピクシス司令が園長って時点で何となく予感はしてたけどさー…こうも104期が揃ってると気味が悪いというか何と言うか…)
でも、こうして巨人に脅かされることなく笑顔で無邪気に遊ぶ仲間達を見れて嬉しい気持ちは隠せない。
「にしても意外だな。」
ダルそうにあぐらをかき壁に背中を預けながら、ユミルが隅で大人しく本を読んでいる金髪の男の子と黒髪の女の子を見遣り呟いた。それを聞いたエレンも懐かしい二人を見遣り「何が」と首を傾げた。
「何で、アイツらのとこに行かねぇの?お前が来て4日目だけど、一度もアイツらの傍に行ってねぇだろ。」
その言葉にエレンは「あー」と苦笑しポリポリと頭を掻いた。
「いや、何っーかさ、アルミンとミカサは今でも家族みたいには思ってる。だから、今度はアイツらの好きに生きて欲しい…ん?そうなんだけど、あれ?特にその、あの頃のミカサはさ、俺を守るとかいって自分を犠牲にしてた部分あったろ??だから、今度は好きに生きて欲しいなーって思って。」
ヘラっと笑うエレンにユミルは意地悪く笑うと「お前がミカサの執着から逃げたいだけじゃねぇの」と言ってやると、エレンはすっと真顔になり「俺はアイツを犯罪者にはしたくないんだ。」と言った。
「…うん。そうだな…さすがに…ごめん、俺が悪かったわ。」
「いや、いいよ。アイツらが大事なのは変わらねぇし…うん…」
**************
近々、新しく入ってくる奴がいるとクリスタから聞いたのは夕飯のグラタンらしきものを食べている時だった。
どうもクリスタはあまり料理が得意ではないらしく、味はまぁ良くても見た目は少し残念だったりする。まぁ、それも可愛いんだから、俺のクリスタ。
しかし、あの保育園に新しい奴がってのが気になる。何せ、何の因果か前世に関わりかある奴らばかりで占められているのだ。これで無関係の奴が来るとは思えない。しかもクリスタの笑顔がいつもの3割は輝いている。
(ライナーとベルトルさんはアニの兄貴で大学生だから違う…あと会ってねぇのは、エレンとジャンか。どっちだ…)
とりあえずジャンだったら殴ろう。
そう思ってグラタンっぽいものを完食したユミルはよいせと風呂へと向かった。
「エレン・イエーガーです。よろしく」
にっこにこと笑いながらクリスタの隣で挨拶をするエレンを見て、随分と愛想が良くなったなーと感想を抱いた。
何せ昔は目つきは悪いし、見知らぬ人間に笑顔で挨拶なんて真似をするような性格ではなかった。お世辞にも社交的ではなかった。
そんな奴が!!にっこにこと笑いながら挨拶なんて!!
ちょ、気持ちワルぃwww
そんな事を思ってたらロックオンされちまった。
「…でさ、どうやったら一緒にお風呂というイベントを避けられると思う?」
「知らねぇよ」
ボーッと外で駆け回る園児を尻目に何でブランコに座りエレンのお悩み相談なんかしなきゃいけねぇんですかね?
「っーか、別に入りゃぁイイじゃん。むしろ、羨ましいこった。」
俺もエレンも好きな相手と二人暮らしって状況は同じで、記憶持ち同士ということもあり気づけば保育園では常に一緒にいるような状態になっていた。お互い精神的には大人に近い事もあり、無邪気にごっこ遊びやら鬼ごっこなんてのには興じきれない。なので、ちょいちょい遊びの輪から離れては、こうして二人で休憩していたりする。
「ユミル…お前は好きな人が無防備に真っ裸を晒しているのに、何も出来ない苦痛が分かるか?あんの白い柔らかい胸を押し付けられて、無邪気にアヒル隊長で遊べるほど俺は幼くも枯れてもいない(`・ω・´)」
「…決め顔で言う事か、ソレ」
呆れた顔で言うと、何かを思い出したかのようにエレンが「そういえば」と切り出した。
「ジャンがさ、エルヴィン団長の会社に強制就職したわwww」
「はwww強制っwwwっーか、いたのかよ」
「それがさ、団長達と再会して宴じゃぁー!!って乗り込んだ居酒屋にジャンがバイトしてたwwwんで、就活中だったらしく、めでたく団長の会社に就職が決まったんだって。リヴァイさんが、扱き使うき満々でウキウキしてたwww」
「ジャン、終わったなwww」
前世から何げに不憫な奴だったが、やっぱ不憫な奴だな。
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最近、保育園にエレンっていう男の子が来た。何でだろう、その子を見ると、とても悲しくて苦しくて『ごめんなさい』って気持ちでいっぱいになる。
泣きながらお兄ちゃん達に言ったら、お兄ちゃん達は何だか怖い顔…ううん、痛そうな顔をしてた。
わたしが、おともだちつくれないからかな
なかよくしたいの
でも
なんでか、できないの
いっしょにあそびたいのに
いえないの
だからね、いつも一人で絵本をよんだりしてるの
さみしい
「ねぇ…アニも一緒に遊ぼ?」
にっこり笑って手を差し伸べてくれたエレンくんにビックリして逃げちゃった。
後ろにいたユミルが何かはぁーってしてた。
ごめんなさい
チクチクと痛いの
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