虹の先【7】


翌日、仕事が落ち着いた頃を見計らい隣の同僚を誘い給湯室へとやって来た。



「珍しいわねー、斎藤さんから休憩の誘いなんて。」


にこりと笑った彼女に微かに笑みを浮かべると、「たまにはな。あと、少し…聞きたい事があって」と肩を竦めた。


「ふぅん。なに聞きたい事って?」

コーヒーカップをゆらゆらと揺らしながら首を傾げる彼女…加藤に、一は躊躇いがちに口を開いた。


「…溝口という女子社員を知っているだろうか。」



「溝口?何課の子?」



「すまない、わからない。」



少し申し訳なさそうな表情を浮かべる一に、加藤は困ったような顔で「うーん、確か秘書課に溝口って名前の子がいたような気がするけど…。それ以外となるとわからないわ。」と苦笑した。



「秘書課…。」



よくあの人の話題で出ていたな。


「彼女は…社長に好意をもっているのだろうか。」


「そりゃぁ、そうよ。秘書課のほとんどの子が社長が好きだったはずよ。結婚が決まっても、秘書課の子達は諦めきれてないみたい。」


苦笑しながら、「にしても、斎藤さんがそういう話を聞きたがるって珍しいわね。何かあったの?」とマジマジと見てきた。


「まぁ…少し気になって。」


と、言葉を濁して答えた一に加藤の目は面白そうに細められた。




Next
- 7 -
[*前へ] [#次へ]
戻る
リゼ