虹の先【3】
夕食が終わり、千鶴を寝かしつけた後、二人はリビングで寛いでいた。
「引き継ぎは順調か?」
「はい。後任となる者も優秀ですし、このままなら問題なく任せられるかと。」
ゆるく笑みを浮かべると、「早く千鶴を迎えに行ける状態にしたいので、トラブルなどは起きて欲しくないですね。」と肩を竦めた。
「何だか悪ぃな。仕事、辞めさせちまって。」
苦笑する土方に首を横に振ると、「仕事も確かに充実してましたが、代わりがききますから。」とにこりと笑った。
「それよりも、土方さんの方がお忙しいのではないですか?何だか顔色もあまり良くないですし…」
じっと見つめてくる一に苦笑し肩を竦めると、「仕事自体はたいした事ないんだが…な。」と言葉を濁らせて終わった。
「それより…俺はいつになったら名前で呼んでもらえるんだ?今はお前も¨土方さん¨のはずだが。」
「あ…そ、れは…」
ぽっと頬を赤らめ恥ずかしそうに口ごもる一に、くつりと笑うと「一…。」と耳元で囁く。
「…と、…としぞうさん…」
泣き出しそうなほど顔を真っ赤にし、消え入りそうな声で呼んだ一に微笑むとぎゅっと抱きしめた。
Next
- 3 -
戻る