【22】


歳三が戦を予見し準備を整えるように宣告してから、一月あまり…。とうとう火蓋は切って落とされた。



「…随分と勿体振ったな。もう少し早く動くかと思ったが。」


脇息にもたれ書物に目を通しながら、報告にそんな感想を漏らす。


「あちらには先代からの重臣である志田の四天王がいるからな。血気に逸る主人を宥めすかして、慎重に作戦を立てたらしい。」


気心のしれた家臣である永倉新八が苦笑気味に理由を説明する。


「四天王ねぇ……。」


微妙そうな顔で笑い肩を竦めると、「まぁ、どんなもんかお手並み拝見ってとこか。」と軽い調子で呟く。



「じゃぁ、暫くは様子見か?」



「いや…援軍の準備をしておけ。狙いの奥平は徳田の傘下だからな。同盟を組んでいる以上、こちらも求められたら出ないわけにはいかねぇからな。」


書物を閉じると、「おそらく徳田は援軍を求めてくるだろうよ。志田の騎馬隊は有名だからな、徳田も簡単にはいかねぇ。」と永倉を見据え告げる。



「あいよ。にしても志田か。跡を継いだっー息子はどうかねぇ。」


「さあな。油断しねぇのに越したことはねぇだろ。」







「戦だと…?」


侍女達の話に顔をしかめると、ポツリと呟いた。
こちらに嫁いで来て初めて聞くきな臭い話に、ぎゅって胸元を握り締めそっと目を伏せた。







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