【21】


神妙な様子で顔を突き合わせる複数の男達。上座に座る若い男が決意を秘めた目で地図を睨みつける。


「奥平の奴め、私を裏切った事後悔させてやるわ!」


パチンと手に持った扇子で床を叩き、力強く言い放った。


「しかし殿、早々に決着をつけねば厄介な事になりますぞ。今や奥平は徳田の傘下…そして徳田はあの土方と同盟関係にあります。援軍を送られては……」


古参の家臣である男の進言に、殿の呼ばれる若い男は顔をしかめる。


「何を怖じけづいておるのだ!我ら志田の騎馬隊は最強であろう!」


癇癪を起こしバンッと床を叩き怒鳴る若い主に、家臣達はひそかに困ったように溜め息をついた。



先代はこの戦国の世にも名を知られた武将であった。勇猛果敢で領土を広げ天下をもとれるのではと夢を見た。



しかしどんなに武を誇ろうと、人は老い死んで逝く。
先代もまた老いと病には勝てずこの世を去った。


そして後を継いだのが目の前にいる若い主。
経験も浅く、考えも未熟だ。偉大な父の存在が重くのしかかり、周りが見えなくなっている。



「殿…確かに我ら志田の騎馬隊は最強であると自負しております。しかしながら、徳田・土方の両軍はかなりの強敵。我らとて簡単には勝てますまい。」



暴走しがちな主を、家臣である男は静かな口調で諌めた。



「まずは、目的である奥平を落とす事をお考えなされ。」



欲をかいてはなりませぬ。



その言葉に若い男は渋々と頷いた。



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