【17】


¨面倒¨


その言葉で何となく事情を悟り、口を紡ぐ。好き勝手にやってるように見えて、いろいろと問題もあるのだろう。


それに巻き込まれる千鶴姫も哀れだ。



「…もし、千鶴姫が強く望まれたのなら一度だけでも、町に連れて行って下さい。」



「…………。」



無言でじっと見つめてくる歳三に、微かに寂しさを滲ませた笑みを浮かべ口を開く。


「私は、この国に嫁いでくるまで城の外に出た言はありませんでした。それ故、生まれ育った国がどのような所か、人々の暮らしはどうだったか知りません。どんな国だったか、知識としては知っていても、現実がどうなのか分からないのです。これでは人に…貴方に話せません。だから、千鶴姫には胸を張って己の国がどんなものか話せるようにして欲しいのです。」


すっと辺りに広がる田園と青く広がる空を眺め、「このような景色を知らぬままでいるのは、勿体ないでしょう。」と静に呟く。



歳三は、その様子を眺め目を閉じると「…考えておく」とだけ答えた。





穏やかな時を過ごし、機嫌良く城に戻った一を待っていたのは、半泣きで顔を赤くしたタエだった。


「姫様!もう黙って城を出ないとお約束したではありませんか!」

叱り付けてくるタエに、一は首を傾げるとさも不思議そうに「だから、書き付けを残したではないか。」と告げる。



「そんな子供のような揚げ足を…!」


ふるふると怒るタエを尻目に、一はくすりと笑うと脇息にもたれ掛かった。




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