成果
一が土方の手伝いをするようになってから、宮中の者達の気持ちは最高に近いだろう。
何せ、仕事、仕事で碌すっぽ休まなかった主が休憩をきちんと摂るようになった。(そうせざる得ないだろ、とは当の主の主張)
仕事中毒の主がと涙ながらに喜んだ者もいて、主がドン引きしたのも記憶に新しい。
それに、土方の傍にいる事で¨女¨としての成長を望まれる一。
一が土方を慕っているのは分かるが、それはまだ幼子が親を慕うような感情で、異性としてではない。いや、仄かにではあるが恋情のようなモノは見えるが、それは幼過ぎてハッキリしない。
傍にいる事で、しっかりガッツリ男女の関係になる事を宮中の者達はニヤニヤと温かい目で見守っていた。
そして、そのように導いた聡には喝采が贈られた。
「はぁ……」
深々と溜め息をつくと天井を見上げた。
「どうかしたんですか?」
コテンと首を傾げ心配そうに見てくる一に苦笑を浮かべ、ゆったりと手を伸ばし、しなやかな髪を梳くように撫でる。
「…皆に心配されるほど、俺は仕事ばかりしてるか?」
「はい。」
一にまで即答され、土方はガクリと項垂れる。
「土方さん、いつもお仕事で忙しくて…疲れた顔してるのに休んでくれないから…だから、皆心配してます。」
「……そうか。」
そんなつもりはなかったんだが、と呟くとそろそろと少し低めの体温が頬に触れた。
「だから、おやすみなさい。」
「…ああ、おやすみ。」
ゆっくりと目を閉じ、優しい手を感じながら眠りについた。
一は己の膝に頭を乗せ眠る土方に、ほんのりと目元を桃色に染めながら嬉しそうに微笑んだ。
幸せな空間を、周りはただ静かに見守っていた。
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