天然って…
一が聡に手を引かれ土方のもとを訪れた時は穏やかな空気が流れていたのだが、一が「私も、何かさせて下さい」と願い出ると困惑した雰囲気が流れた。
聡は、これは姉が自分で何とかするべき事だと考え、口出しはしていない。
どんなに姉が大事でも甘やかし過ぎるのは、姉の為に良くないと些か親の様な眼差しで見守っていた。
「ちなみに、何がしたいんだ?」
苦笑を浮かべる土方が問い掛けると、一はコテンと首を傾げると
「…聡と同じ事をしたいです。」
ピシリと土方が固まるのが分かった。
(姉さん…さっき、それはダメだって言ったじゃないか…)
額を押さえ小さく首を振ると、チラリと土方を見遣り溜め息をつく。
(うん…流石に土方さんも驚くよね)
「一……それは駄目だ。」
眉を寄せ難しい表情の土方がキッパリと言い放つと、一は悲しそうに顔を歪め土方を見つめる。
(…それは狡いと思うよ、姉さん…)
そんな顔されたら、土方とて揺らいでしまうだろう。しかし、本人は自覚無しなんだから困ったものだ。
「一……理由はなんだ。」
深々と溜め息をつく土方に、些か同情しつつ姉の言葉を待つ。
「…皆、働いているのに私だけ何もしないのは狡いです。皆、私に良くしてくれるけど、私は何もお返しが出来ません。聡だって働いていて…剣の稽古をしたりして忙しいのに、私だけのんびりする事など……」
しゅんと項垂れる一に土方は苦笑すると、優しい手つきで頭を撫でる。
「それで、どうして聡と同じ事をしたいんだ?」
「……何となく?」
ゆったりと首を傾げる一に、土方と聡はガクリと肩を落とす。
まさか、¨何となく¨なんて言葉が返ってくるとは思わなかった。
「そうか…何となく、か…」
苦笑しながら一の頭を撫でる土方に、聡は申し訳なさそうに頭を下げた。
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