地上は

「そういえば、東で近藤らに出くわしたぞ。」


思い出したようにゆったりと茶を飲みながら告げた風間に、土方はピクリと眉を動かした。


「ここ数年会ってねぇが、元気だったか?」


「ふん…相も変わらず呑気にふらふらとしているようだ。近藤も貴様の噂は気になっていたようだからな、近々訪ねてくるだろうよ。」


肩を竦める風間に、土方は苦笑を返す。


「まぁ、元気そうで良かった。」


「貴様には関わりはないだろうが、西の方がきな臭くなってきた。」


湯呑みを静かに机に置くと、風間は顔をしかめ溜め息をついた。


「…ついにか?」


「ああ。頂点に立つ者がアレでは、仕方あるまい。」


呆れたように嘲笑する風間に土方は返す言葉もない。

湖の底にこもりっぱなしの土方と違い、地上で鬼神として武の守護をしている風間には人の世界の詳しい情報が入ってくる。


土方も、西の情勢が危ういのは知っていたが頂点に立つ人物の事は知らないでいた。


「そんなに無能な奴なのか。」


「は、アレが無能でないのなら家畜や赤子ですら有能となるだろうよ。」


馬鹿にするように笑った風間の言葉に、土方は呆れたような表情で口を開いた。


「何故、そんな無能な奴が国を纏められた?」


「いや、纏めたのは奴の父親だ。父親の方はそこそこ有能な奴だったが、あっさり死んでしまってな。」


「で、継いだ息子が無能だったと…」


「ああ。おかげで、地上は混乱が酷い。あれでは近いうちに戦が起きるな。」


面倒そうに語る風間に、土方は「そりゃ、お疲れさん。」と笑った。


鬼神である風間の元には、そのうち人間達が勝利を願いにやって来るだろう。


近い将来を予想しげんなりとした表情を浮かべる風間に、同情し「まぁ…頑張れ。」と告げた。



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