不揃いな家族【8】

和人は、今までの生活とは比べものにならない程の安心感にむず痒さを感じていた。


質素だがきちんとした食事に


以前は冷たい川で清めていただけだった辛い時間が、温かい風呂に変わり


弟と二人っきりで寄り添って寝た不安な夜は、頼れる大人が側にいるというだけで安心できる。



チラリと真ん中に眠る弟の向こうにいる斎藤を見遣る。


もう既に夜も更け静まり返った中で寝返りの音は意外と大きく聞こえた。


縁もゆかりもない自分達を保護してくれる男


一見、ひどく冷たそうに見える男

だけど、優しい男


父と呼ぶには若すぎて


しかし兄と呼ぶのは何だか違う気がする。


「…眠れないのか」


急に静かな声が聞こえ、ビクリと肩を跳ね上げると、斎藤がじっとこっちを見ていた。


起こしてしまったと萎縮しながら、コクリと頷けば斎藤は何かを考えるような素振りを見せた。


「…共に寝るか?」


静かな問い掛けにパチクリと瞬きながら反射で頷いていた。


「ならば来るがいい。」


静かに和人が入れるように斎藤が体を動かしたのを見て、和人はそろそろと布団から抜け出し斎藤が寝る布団に滑り込んだ。


(…あったかい…)


本人も気づかぬ内に斎藤に抱き着き夜着を握り締めた和人は、すぐに襲ってきた睡魔に身を委ねた。



じっと和人を眺めていた斎藤は、チラリと千歳を見遣りズレた布団を直すと再び自分も眠りについた。




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