不揃いな家族【6】


「なんで……なんで、たすけた。」

目の前にある握り飯と漬物、味噌汁を睨みつけながら搾り出すような声で尋ねた。


斎藤という男は、自分や弟に何の縁もないというのに。


先日は盗んだ店の店主から救われ、


今日は弟を医者に連れていってくれ、看病を


そして和人には食事を与えた。


何で、こうも良くしてくれるのか分からない。


「……助けたつもりはないが。」


「じゃぁ、どういうつもりだよ!俺や弟はあんたには何の関係もないだろ!」


癇癪を起こしたように叫ぶ和人を静かに眺め、斎藤は小さく嘆息する。


「…ただの成り行きだ。気にする事はない。」


「な…!」


¨そんな理由、納得できない!¨
そう叫ぶ前に、静かにしかし鋭い目で見据えられ言葉に詰まる。


「……納得できぬというなら…罪滅ぼしとでも思え。」


「つみほろぼし…?」


意味が分からず、ポカンとした表情を浮かべる和人に斎藤は淡々と言葉を紡ぐ。


「俺も会津戦争に加わっていた。あんたや、あんたの弟の家族を護れなかった、その詫びと思えばいい。」


「……そんなの、あんたのせいじゃないじゃん。」


ムスリとした表情で俯く和人に、「そうだな。」と静かな声が答える。


「だが…原因となったモノの一部でもあるだろう。」


「………変なの。」


「ああ…。」


和人の顔に仄かに笑みが浮かんだ。


「和人…。」


「何。」


「あの小屋から、お前達の必要な物を持って来い。」


斎藤の言葉に顔を上げ首を傾げると、淡々とした声が「あそこより、此処に住む方が良いかと思ったが…何かあの小屋に理由があるのか?」と告げ、驚きにあんぐりと口を開ける。


「な…ない、けど…。」


「そうか。」


「……此処に置いてくれるの?」


「そのつもりで言ったんだが…」


無表情に話す斎藤に対し、徐々に顔を明るくした和人は「ありがとう!すぐ持って来る!」と嬉しそうに笑った。




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