不揃いな家族【3】


朝日が顔を覗かせつつある、まだ薄暗い早朝の道を斎藤はゆったりと歩いていた。


もともと朝は早い方だったが、戦後になってからは、特に早い。


もう巡察もなく、戦中のように命の危険があるわけでもない、なのに熟睡は出来ないでいる。


しかし当の本人は¨眠れないのならば仕方あるまい¨と早々に割り切ってしまっていた。


なので出勤の時間まで、こうして散歩をして時間を潰していた。


ガサッガサッ


と茂みの方からこちらに近づく音が聞こえ、斎藤は足を止めると身構える。


そして飛び出して来たのは、犬や猫なのではなく、人間だった。



「お前は…」


数日前に斎藤が捕まえた子供だった。



「助けて!」


子供は斎藤の姿を見ると泣きそうな顔で縋り付いてきた。


「助けて!弟が、弟が!」


小刻みに震えながら叫ぶ子供に眉を寄せると、とにかく「落ち着け」と背を叩く。


「それで、弟がどうしたのだ。」


「あ、朝、起きたらすごい熱で…俺…」


「…弟はどこだ。」


とうとう泣きじゃくり始めた子供に手を引かれ、ボロボロの小屋へと入ると薄い布団の中で苦しげに呼吸を繰り返す幼い子供がいた。


「……高いな。」


そっと額に手を乗せると、かなり熱く眉を上げる。


おそらく、このまま放置しておくと命は危ういだろう事は分かる。

泣きじゃくる兄を見遣り、そっと布団に眠る幼子を抱き上げる。


「医者に見せた方が良いだろう。行くぞ。」


「…ん。」


足早に小屋を出ると医者のところへと急いだ。




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