不揃いな家族【2】
適当な場所で子供を離すと、子供はズササッと警戒心をあらわに後ずさる。
「…な、何でつきださなかったんだよ!よけいな事するなよ!」
ぎゅっと大根を大事そうに抱きながら、斎藤をキッと睨みつけてくる。
「………。」
よくよく見れば子供はまだ幼く10にも届かないであろう。お世辞にも身奇麗とは言い難い子供だった。
「……もう遅い。早く帰れ。」
一言告げると斎藤は子供を残し、住家へと歩みを進めた。
(何だよ…何なんだよ、あいつ!)
子供はムスリとした表情で人里離れた小屋へと入った。
「にーちゃ!」
奥から、とてとてと寄ってくる小さな幼児を見てやっと笑みを浮かべると大根を置き、幼児をぎゅっと抱きしめる。
「いい子にしてたか?今、ごはん作ってやるから待ってろよ。」
「あい!」
にぱっと無邪気に笑う弟の頭を優しく撫でると子供は台所らしき場所へ向かう。
この小屋には子供ー和人と弟しかいない。和人も弟も、あの戦争で守ってくれる家族を亡くした。だから、自分が弟を守らなきゃいけない。
拙い手つきで大根を切りながら、新たに決意を抱く。
料理だって、見様見真似だから上手くはないけど、食べて生きなきゃいけない。
弟を生かせなきゃいけないんだ。
弟を守れるのは自分しかいないんだから。
だから
だから泣いてなんか
泣いてる暇なんか
無いんだ。
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