不揃いな家族【22】


夜も更け寝静まりシーンとした空気の中、聞こえてきた小さなうめき声に和人は目を覚まし静かに寝返りを打った。


「っ…う…」


たまに斎藤はこうして魘されている。和人は布団をぎゅっと握りしめ眠る斎藤を見つめる。


「は…ひ……たさん…」


和人は静かに布団から抜け出し、這うようにして斎藤の枕元に行くと、ツーと斎藤の目尻から涙が流れた。和人は、そろそろと手を伸ばし涙を拭うと、斎藤の頭をゆっくりと撫でる。


(…誰の事を呼んでるんだろう…)

魘されている時に必ず呼ぶ名は、ひどく切ない響きがする。何となく、斎藤にとって大切な人なんだろうなと感じ複雑な気持ちになる。



父様が誰かに盗られてしまう気がしてしまうのだ。



しばらくの間、斎藤の頭を撫でていると苦しげな声も消え、かわりに静かな寝息が聞こえ始めた。和人はホッと胸を撫で下ろし、また静かに自分の布団に潜り込む。



(さむっ…!)


すっかり身体も布団も冷えてしまい、ぶるりと身体を震わすと布団を巻き付け目を閉じ無理矢理眠りについた。






「では、行ってくる。」


「「いってらっしゃい!」」


翌朝、いつも通り仕事へ出掛けた斎藤を見送り、千歳と二人、今日も畑仕事をすべく準備を始めた。




「えーっと…たぶんこの辺なんだよなぁ。」


斎藤の家からいくらか離れた道で、ある大柄な男が紙を見つめながらガシガシと頭を掻き首を捻っていた。



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