不揃いな家族【18】
拙い範囲ではあるが家の掃除をしながら和人は思い詰めたような溜め息をついた。
今度こそ斎藤は一人で遠くにいってしまうかもしれない。
和人や千歳を置いて…。
雑巾をギュッと握り締め暗い瞳で壁を見つめる。
「にーちゃ?」
きょとんと不思議そうな表情で見てくる千歳に慌てて「何でもないよ」と告げると、また拭き掃除を再開させる。
掃除を終え千歳と二人で斎藤の帰りを待つ間、今日も別れを告げられない事を祈る。
「しゃいと、まだぁ?」
早く帰って来て欲しい千歳とは逆の事を和人は思っていた。
いや…勿論、和人だって斎藤が早く帰って来てくれるのは嬉しい。でも、その分早く別れを告げられるのではないかと思うと、心が重い。
「あ!」
足音が聞こえ千歳が嬉しそうに声を上げて直ぐに、斎藤が帰ってきた。
「しゃいと、おかーりー!」
パタパタと駆け寄り嬉しそうに抱き着く千歳の姿を目で追うと、斎藤と目が合い気まずさに和人は目を逸らし俯いた。
「和人。」
「…な、なに?」
ビクリと肩を震わせ、恐る恐る顔を上げる。
「……おそらく今年の内に斗南に移る。お前達も行く覚悟があるなら、その心積もりでいろ。」
「え……」
ポカンと斎藤を見つめ、言われた事を理解しようと考える。そして期待に顔を明るくしながら「そ、それって、俺達も一緒に連れてってくれるってこと?これからも斎藤と一緒にいていいって事だよね?」と興奮したように問う。
「…ああ。」
「や、やったぁ!」
嬉しそうに子供らしく喜ぶ和人に、斎藤は微かに口元に笑みを浮かべていた。
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