不揃いな家族【12】
(斗南か……)
いつもピンと背筋を伸ばしキビキビとした様子で歩く斎藤だったが、この日の足取りはどこか遅かった。
会津は新撰組時代は勿論、今も斎藤は世話になっている。本来なら藩士ではない自分を置いてくれている……今の唯一の居場所だ。
斗南に行くというのなら、来いというのなら行く。
しかし、そうなるとあの二人をどうするか。
未開の、今の生活よりも厳しくなると予測される場所に連れていくわけにはいかない。
だからといって放り出すわけにもいかない。
(誰か引き取ってくれる者を探さねばなるまい。)
親しい者も碌にいない斎藤には容易な事ではないが、それしか手がない。
(…佐川さんに聞いてみるか。)
「…ただいま。」
「おかえりなさい!」
「しゃい!」
帰宅すると笑顔で駆け寄ってくる和人と千歳に、斎藤は後ろめたいモノを感じ顔を背け無言で靴を脱ぎ部屋へと向かう。
「あのね、今日はちゃんと市場で買えたんだよ!」
「…そうか。」
まだまだ周りの人達は冷たいけど、でもちゃんと売ってくれたと嬉しそうに報告する和人の頭をぎこちない手つきで撫でてやる。
すると照れたように笑うものだから、斎藤の心に罪悪感のようなものが過ぎる。
「ちーも!ちーも、いいこ!」
ギュッと斎藤の足に抱き着き見上げてくる千歳の頭もそろそろと怯えるように撫でると、目を伏せた。
「さいとー?」
斎藤の様子を不思議に思ったのか、和人がきょとんとし首を傾げていた。
「……お前達に話がある。」
低い、どこか辛そうにも聞こえる声に自然と和人の背筋は伸び、千歳も大人しく斎藤を見つめた。
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