虹の向こう【28】
年甲斐もなく川ではしゃいだ後、ふらりと立ち寄った場所でアイスクリームを買うとホテルへと向かった。
「楽しいねー!」
土方と一と繋いだ両手をぶんぶんと揺らし、にこにこと笑いながら二人を見上げた。
「そうだな。」
「ああ。」
一の緊張もなくなりぎこちなさが消えた事により、自然な雰囲気が漂っていた。
「最近は、いろんな種類のアイスがあるんですね。」
「だな。昔はベーシックなもんがほとんどだったんだがな。……甘ったる過ぎて、口の中が気持ち悪いな。」
顔をしかめ苦笑する土方に、クスリと笑いクールミント味のガムを鞄から出し土方に渡す。
「サンキュ。」
にっと笑いガムを口に入れると、表情をいくらか和らげた。
夕食は、和食のコース料理で味も見た目も素晴らしかった。
「ごはん、おいしかったねー」
ホテル自慢の温泉に千鶴と浸かりながら、今日の夕食の話をする。
「そうだな。千鶴は何が1番美味しかった?」
千鶴の柔らかな髪を洗いながら問い掛ける。
「えーっとねぇ…おさかなさん!」
「ああ、鱸の塩焼きか。」
「うん!でもね、ちづる、はじめちゃんの作ったごはんのほうがスキだよ」
内緒話をするように告げられた千鶴の言葉に驚き固まるが、ゆるゆると笑みを浮かべると「…ありがとう。」とだけ述べ、シャワーで千鶴の髪にある泡を洗い流した。
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