虹の向こう【27】

ホテルに着いたのがお昼過ぎで、少し部屋でゆっくりした後、三人で散策に出掛けた。


都会のようなコンクリートに囲まれ、道路からモアモアと熱気が立ち込める場所とは違い、山があり木々の緑が爽やかに彩るこの地は、肌に張り付くような蒸し暑さは感じず、たまに吹く風が心地好い。


「…風が、気持ちいいですね。」


「ああ。近くに川があるらしいからかもしれねぇな。」


土方も穏やかな表情で口元に笑みを浮かべる。


「ね、ちづる、かわにいってみたい!」


ピタリと立ち止まり、わくわくとした表情で見上げる千鶴に、土方はポンポンと頭を撫でる。


「そういや、お前…川には行った事ないよな。」


その言葉に一は驚いた表情を見せた。そこそこ田舎で育った一にとって、川は当たり前のように流れていたし、夏には恰好の遊び場だった。



(…確かに、千鶴の歳で一人で川遊びは危険だ。それに…都会の川はちょっと、な…)


就職のために上京したばかりの頃、初めてみた川の様子にショックを受けたのを覚えている。






「わぁぁ、きれー!みどりじゃないねー?」


キラキラした目で二人を振り返り言った一言に、土方と一は思わず顔を見合わせ苦笑した。


一は川淵に近づくとスカートを押さえるとしゃがみ込む。そして、そっと片手を川に浸すとチラリと千鶴を見遣る。


少し緊張した様子でそろそろと片手を伸ばした千鶴は、ゆっくりと川に入れる。


「わ、冷たいねぇー!」


キラキラとした目で一を見て、にこりと笑う。その時、ピカリと光ったように感じ振り返ると土方がデジカメを片手に立っていた。



「記念に、な。」


くつりと笑う土方に、一と千鶴も笑った。




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川云々に関しては、私自身が都内某所で初めて川を見ての感想です。都内全ての川を指しての事ではありませんよーp(^^)q
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