虹の向こう【23】


『いいと思ったら、行動あるのみよ。ふふ…良い知らせを楽しみにしてるわね♪』


と、輝かしい笑みで弟に告げると信子は出ていった。



「…そんな事言われてもな。」


ソファに身を預けガシガシと髪を掻き乱すと溜め息をつく。


斎藤に対しては素直に好ましいと言えるし、惹かれているのは自覚した。


それに勝手な事だが千鶴の母親にと望むのならば、斎藤が適しているだろう。



しかし、それはこっちの都合でしかない。



「……とりあえず、距離を縮めねぇとな。」


いくら千鶴がいて、成り行きで一夜を共にはしたが、今の関係は知り合いでしかない。



知り合いから関係を進歩させる為にも、接触を増やさないとなと考え、ふっと笑みを浮かべた。







■■■■


「そういえば、もうすぐお盆休みよね。皆は、もう予定は決まってるの?」


いつものように同僚達との昼休み、話題は来週に迫ってきた長期休みの事。


「私は、彼氏と旅行ー」


「いいなぁ。私は、実家に帰るわ。親がうるさくて。」


次々と予定を述べていく同僚達に、一は長期の休みをどう過ごすか、ぼんやりと考えていた。


実家には帰省しない予定だし、だからといって旅行にいくわけでもない。まったくの空白だった。


「斎藤さんは?どっか行くの?」


同僚の問い掛けにハッとすると、ゆるゆると首を横に振った。


「いや…特に予定はないな。」


一の答えが予想外だったのか驚いたような声を上げた同僚達に首を傾げると、ゆったりと茶を飲みぼんやりと休みの予定を立て始めた。



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