虹の向こう【22】

5才年上の姉である信子には、滅多に家にいることのなかった両親に変わって、いろいろと面倒を見てもらっていた。


土方が誰より信頼している人物だ。


また信子の方も、一人で仕事に子育てをと全てを抱え込んでしまっている弟を案じ、結婚し普段は遠く離れて生活しているのだが、たまに弟の下を訪れいた。



「ねぇ、貴方…そろそろ再婚を考えた方が良いんじゃないかしら。」


ゆったりとソファに腰掛け紅茶を飲むと、チラリと奥の部屋へ視線をやると、そう切り出した。


「………。」


難しげに眉をひそめると、千鶴が昼寝をしている奥の部屋を見遣る。


「私も、そう簡単にいかないのは分かっているわ。でも、千鶴ちゃんの為にも母親は必要よ。女の子だもの…男である父親には相談しづらい事も出てくるわ。私も、ずっと側にいるわけでもないし。」


「……それは、そうだが…。」


土方自身、それに関しては不安があり、母親が必要かと感じる機会はそれなりにあった。


「貴方、モテるんだもの。候補の一人や二人いないの?」


紅い口紅が塗られた唇を笑みの形に作り首を傾げる。傍目に見れば美人であるし、グッとくる仕草ではあるが土方にとっては恐ろしく感じる。


(なんっーか…毒々しいんだよな…)


遠い目をし、ヒソリとそんな事を考えつつ、溜め息をついた。


「寄ってくるのは、似たような奴らばかりだ…。」


その答えに信子は形のよい眉をひそめる。


「まったく…一人くらい、いいなって人はいないの?」


その言葉に、何故か斎藤が思い浮かび息を飲む。


確かに、千鶴も懐いているし


良い母親にもなってくれそうだ。

性格も好ましいし


容姿だって悪くない。



しかし、だからといって会ったばかりの斎藤を思い浮かべるのは、どうなんだ。



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