一方通行な問い掛け

じっと見てくる赤い瞳に、些か居心地の悪さを感じながらもドカリと部屋に置いてある椅子に座る。

すると、女がゆっくりではあるが体を起こした。すかさず千鶴が背中に枕を挟み座り易くしてやると、女の視線が千鶴へと向き確認するように枕に触れ小さく首を傾げた。


「座り易いと思いますけど、どうですか?」


千鶴の言葉に暫しおいてコクリと頷いた女はまた視線を戻し、こちらを見てきた。


「俺は、ここの主の土方だ。お前、何で此処にいるか分かるか。」

「………。」


土方の言葉に無言で、しかし小さく首を傾げる事で女は答えた。



「住んでた所に、戻りたいか。」


「…………。」


これにも無言で首を傾げる女に、土方は頭を抱える。


「…年は。」


「………。」


土方のその言葉に女はパチパチと瞬くとまた小さく首を傾げた。
果たして、答えようかなくて首を傾げているのか、本当に分からないのか……反応から後者だろうかと思いながら溜息をつく。


これには水神様と崇められる土方も流石に途方にくれた。


チラリと千鶴を見ると流石に困惑したような表情を浮かべていた。



■■■■■


とりあえず女の世話を千鶴に任し、書斎へと戻る道すがら土方は長い髪をきっちりと結っているのにも関わらず苛立ちに任せ掻き乱した。


地上にいる人間共が勝手に投げ入れてきた娘。


雨を降らせろと願い、望みもしないのに生贄を差し出してくる人間に嫌気がさす。


差し出されても、こっちはどうしようもないというのに。


今まで生贄としてやって来た者達は、ほとんどが地上に戻る事を願ったので望み通り戻してやった。

しかし、今回の娘は………。


「厄介な事になりそうだな。」


面倒そうに溜息をつくと書斎へと足を速めた。



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