眠る眠る
ゆらゆらと光りが反射し穏やかな空気の中、土方の膝に頭を預け一は安らかな表情で眠っていた。
「…どうしてだろうな。」
一を起こさないように配慮しながら、土方は小さく呟いた。土方の手は一の髪を優しげな手つきで梳くように撫で、また一を見る眼差しも優しい。
しかし、土方にはそんな自分が不思議だった。
土方にとって人間は、あまり好きではない、関わりたくない存在だ。
それなのに自分は、一を気にかけ甘やかしている。
確かに一の地上での暮らしは、哀れだ。流石に、地上に戻すのが可哀相で此処に置く事にはしたが、自分はこんなに関わるつもりはなかった。
そんな考えが嘘のような現状には、笑いが込み上げる。
それでも嫌な気にならないのは、一を気に入ってるからに他ならない。
ここにいる連中も皆、同じなのだろう。
「すげぇな、一…。」
くつりと笑い、すやすやと眠る一のふわりとした髪を指に絡ませる。
「土方さん、邪魔するぜ…って、本当に邪魔しちまったな。」
ひょっこり姿を現した原田は、中の様子を見て苦笑し肩を竦めた。
「いや、構わねぇよ。で、何かあったのか?」
笑って原田に答えると、原田の後ろから千鶴が姿を現した。
「やっぱり、こちらにいらっしゃったんですね。」
ぐっすりと眠り続ける一を見つめ、ホッとしたように笑みを浮かべた。
「ふふ…気持ち良さそうに寝てますね。」
一の寝顔を微笑ましげに見つめると、複雑そうな表情でチラリと原田を振り返った。
その様子に土方も先程まで浮かべていた穏やかな表情から、すっと表情を引き締め原田を見遣る。
「さっき、薫から連絡があった。どうやらアイツらはまた、生贄をよこす方を選んだらしい。」
「……ちっ。」
原田の報告に、ぐっと眉間に皺をつくり顔をしかめた土方は、忌ま忌ましげに舌打ちをした。
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