序章


忌み子



忌み子じゃ


あの真白き髪


鮮血の如く赤き目


忌まわしい、あれは鬼の子よ





太陽が地上を明るく照らしている。それは、どこの地でも平等であり、とある小さな村にも同様に陽は降り注ぐ。


カラリとしたいい天気であるというのに、村人達の顔色は晴れない。


「何とかならんもんかのぉ…」


「ほんに、このままでは生きてけん。」


「忌み子のせぇじゃねぇのけ」


「あんの忌み子が生きてると思うと恐ろしゅうてならん。」


「…その事だが、長老達が話しておったが…」


村のあちらこちらで囁かれているのは、暮らしの不安と¨忌み子¨という存在への憎しみの言葉。


人々が忌み子と厭い憎む者は、村の地主の広い屋敷の蔵に住んでいた。


いや、住んでいたというよりは監禁されていたという表現が正しいかもしれない。


陽が照らす昼間だというのに、薄暗い蔵の中に座す女がいた。


年はまだ若く、17〜19ぐらいのほっそりとした佳人だ。


しかし、緩く結っている髪は老人の如く白い。そして村人達が恐れ忌み嫌うのは、彼女の異様な目の色。

まるで血のような真っ赤な目。


彼女が産まれた時、家族は恐れ慄いた。不吉な前兆に違いないと…。小さな村では、地主の家に異様な赤子が産まれたとすぐに広まり騒ぎになった。


殺せ


殺してしまえ


そんな言葉ばかりが響いた。


『もし…その赤子を殺し、逆に祟りで災厄が齎されたらどうする。』


誰かがそんな事を言い、それに怯えた村人達は産まれた赤子を殺さずに、蔵に閉じ込める事にした。

産まれた赤子は、一人の歳老いた老婆に蔵の中で育てられる事となった。



「…………。」


成長した彼女は、ただじっと格子が嵌められた小さな窓から見える外を眺めていた。



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