拍手御礼☆小噺
全1話
「口実」(芹土)


「うわ〜なんだってんだよ」
御所の護衛の帰り道、永倉が突然大声を上げた。
というのも、さしていた傘が強風にあおられて壊れてしまったのだ。
「あ〜あ、新ぱっつぁん何やってんだよ、仕方ねえなぁ〜」
藤堂は呆れた様に永倉に近付いて傘に入れようとすると、
「ほら、永倉君これを使え」
横から思いもしない人物に傘を差し出された。
「いやいやいやいや、芹沢さん!あんたの傘を借りるわけにはいかないって」
瞠目して、永倉は手を大きくふり全身で受け取りを拒否する。
万が一また壊しでもしたら、芹沢の傘だ。
何が起こるかわかったものではない。
同門だからとやたらと目をかけて貰ってはいるが、許して貰う自信はなかった。
「俺が良いと言っている」
なおも食い下がる芹沢に、永倉は冷や汗が出てきた。
「いや、本当に大丈夫だからよ。俺は平助に入れて貰うしな?それに、芹沢さんが濡れちまうだろ?」
藤堂に助けを求める視線を送りながら、芹沢の傘を押し戻す永倉。
「俺の傘を使うのがそんなに嫌なのか、永倉君」
「いや、そういうわけじゃねえんだけどな」
「なら受け取れ。俺はそうだな…」
芹沢は永倉に傘を押し付け、周囲を見渡す。
「芹沢先…」
それに気付いた新見が駆け寄ろうとするが、それより前に芹沢はにやりと笑みを浮かべた。
「土方、お前の傘に入れろ」
「「「「はっ?」」」」
永倉、藤堂も含めた数人がぽかんと芹沢を見つめた。
そうこうしてる間に芹沢は土方の傘に入ってしまう。
「芹沢さん、あんた…」
「なんだ、土方。文句でもあるのか?」
拒否権が無いことは周知の事実。
「はぁ…。勝手にしてくれ」
土方は諦めたように呟き、歩き出した。
「あ〜あ、土方さんも災難だな」
藤堂が二人の背中に向かって両手を合わせる。
「そうでもないかもよ?」
「えっ?」
「なんでもない」
沖田は首を傾げる藤堂を尻目に、二人に視線を向けながら目を細めた。


















「おい、どういうつもりだ?」
「何がだ?」
「何がだ?じゃねえ!不自然だろうがっ!あんたがその…俺の傘に…」
「ふっ…上手い口実だっただろう?」
芹沢は微笑し、土方の頭に唇を寄せる。
「おいっ!」
真っ赤になりながら芹沢を牽制する土方。
「そう慌てるな。傘で見えておらぬわ」
芹沢はくくっと笑い、傘を持つ土方の手を握りしめる。
「芹沢さん、大概にしねえと…」
キッと土方が鋭い視線を向けるが、頬が朱に染まり、少しも迫力が無い。
「屯所までだ。二人きりの時間を楽しもうではないか」
芹沢は言って、傘を低く持ち直し、土方の唇に己のそれを重ねた。




























ラブラブな二人でした(*´∀`)♪
拍手ありがとうございました(*´ω`*)



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