1901-1910

手のひらの蝶

蜻蛉に寄す

離れても 視る月同じと思えども

零れ落ちた記憶

この血生臭い世界が似合わない彼女

紺碧の空と君と

雨が静かに降る

ひとり夢の名残に泣く

光の紡ぎ手

総てを抱き、涙を流す




1911-1920

広い天空に憧れる

明日死ぬと分かれば何を思うだろう

長く冷たい眠り

言葉は時に鎖になる

月の彼方に彷徨う

消滅と生還

君がいない時を

それを私は知っていた、

愛を捨てませう

それ以上は何も求めなかった




1921-1930

空を飛びたいと言ったあなたの横顔

背中で呼んでる

無数の空洞

そんな静かな日々と さようなら

翼持つ者達の群舞

明けない夜の道化師

季節の非情

嘲笑と悪罵

僕等はただ佇んでいた

それと知ってあちらを向く




1931-1940

やがて白々と夜は明けて

あなたに酔う

図書室の窓際の席にて

行方も知れずに流れ去る

無表情に吸う風の香

最後の明日を確実に所有する為に

生きる理由をください。

波が貝殻を残してゆくように

あなたに信じてもらう

最後の孤独を手離す




1941-1950

好きなのはただ一人 君だけ

天つ風

さよならの口づけ

時は何も問わず進んでいく

嗚呼、雨が降ってきた

冷たい鏡

これ以上は望まない

優しく、残酷

擦れ違う一瞬、僕は君を見つけた

あとはもう壊れるばかりだ


リゼ