義務でも強制でもない


求めることはただひとつ
“完璧にやり遂げる”
だから私自身も完璧でなければなりません
必要ないのです、余計な感情など


―――――

ダイニングで早めの朝食をとっていると、チビさんがやってきた。


「おや、お目覚めですか?」

「……うん。もうお出かけするの?」

「えぇ。かなり早い時間にあちらが動くようなので。」

「そっかぁ。気を付けてね。」

眠そうに目をパチパチさせている彼を見ていると微笑ましくなる。

「はい、わかりました。

もう一眠りしたらどうですか?今日はお休みだと聞きましたが。」

「うん、そうする。
あのね…お見送りしたかったの。
でも何時に行くかはしらなかったから、はやく起きて待ってようと思って。」

だから間に合って良かったとニコニコするチビさんに自然と笑みが浮かぶ。


「ありがとうございます。良い子で待っていてください。」

そう言って小さな彼の頭を撫でて、屋敷を出た。


「……どうしてあんな笑い方するんだろ」

その呟きは朝焼けに溶けて消えた。

―――――


「さて。その首輪、良く似合っています。いつもより美人さんに見えますよ。」

「ニャン」

腕のなかに居る猫に向かって話し掛ける。


あ、そうそう。これはただの首輪ではありません。飾りに隠された“秘密”は、探知機に反応しないよう特殊な細工をしました。セキュリティに少しの隙もないなら、こちらがさらに上のものを作り出せばいいだけのこと。


「ここまで私を突き動かす力は何でしょう?」


分かっている。きちんと自覚もしているが、口に出す必要はない。


「ベルベット……頑張るんですよ。」

「ニャァ」

毛並みの良いベルベットを撫で、地面に下ろす。見るからに賢そうな彼女は上品に尻尾を揺らしながら、屋敷に入っていった。


「ふふ。予定通り、あのお嬢様方に見つかってくださいね。」


―――――

「ニャァニャァ」

「はひ!こんな所に猫ちゃんです。迷い込んで来ちゃったんですか?」

ハルは目の前にいた愛らしい白猫を抱き上げる。

「はっ!!とってもキュートな猫ちゃんだから、飼い主さんも必死に探しているはずです。ここはツナさんに相談を!」

彼女は、その前に京子ちゃんに会わせてあげなくちゃ、と言って猫を抱いたまま歩きだす。


“ふっ。お見事です、ベルベット。”


「ハルちゃん、その子どうしたの?」

近付いてきたハルの腕のなかに居る白猫に気付き、京子は優しく問い掛ける。

「さっき中庭にいたら、迷い込んできたんです。」

「そっかぁ。すごくお手入れされた猫ちゃんだね。」

京子に撫でられ、気持ち良さそうに瞳を閉じるベルベット。

「京子ちゃんもそう思いますか?多分飼い主さんとはぐれてしまったんじゃないかと。」

「ノラ猫ちゃんじゃなさそうだもんね。ツナくんに聞いてみよう。」


「さぁ。ボンゴレボスまで辿り着いたら、お散歩に行きましょうね。」


あの人がいるお城まで、貴女の足ならすぐです。



―――――

元々無かったのだから、欠けているという表現は適切ではありません。
これで完成されているのです。


だけど…物足りないという思いがいつしか生まれた。


「熱にでも浮かされているのでしょうか…」


真実は暗い闇の底に横たわったまま、見つけだしてくれるのをひたすら待ち続ける。


私が自分の足で辿り着かなければ見つからないなら、反対の方向に進めばいい。
逆に逆に行けばうっかり手に入れてしまうこともない。


いらない、いらない。
今さら暖めてくれなくても、取り返しのつかない所まで侵食は進んでる。
- 7 -

[*前へ] [#次へ]

戻る
リゼ