Hunny bee

あぁ、止められないのは気持ちだけじゃない。
何もかもが欲しいんだ。


「これなんだけどね。」


月が君を隠す前に
僕が君を攫おう
悲しみが包む夜には
僕が傍にいよう
泣いて泣いて涙が枯れ果てても
僕が君を笑わせるから
僕だけに、僕だけに
全てを


名前に届いた手紙を見て颯は呟く。


「何だか狂気じみてるよね。」

「………お言葉ですが。颯様も似たようなものかと。」

それにスクアーロも軽く同意する。

「エレ……罰を受けたいの?スクアーロにも必要かな?」

「いえ、そのようなことは。ただ誰かがお伝えしなければ、颯様は自覚なさらないので。」

それが私の役目ですからね、とエレはそう言って笑った。二人の間にも2ヶ月という月日は流れて、その時間はまだ短いが関係に変化をもたらすきっかけにはなったようだ。

「相変わらずね、颯。」


「それにしても本当に狂気じみてやがる。」

スクアーロは眉を寄せながら手紙をテーブルに置く。はっきりとは言わない、回りくどい言い回しは彼の性に合わないらしい。手紙の差出人とは分かり合えないとスクアーロは思っていた。

「そんなに欲しいなら、手紙など寄越さずに正面きって奪いにくればいいだろぉ。」

俺だったらそうする、と不機嫌そうにソファにもたれる。その後にやってきた沈黙を破ったのは手紙をじっと読み返していた颯だった。


「最近、誰かと接触した?」

「まぁ、仕事してればそれなりにね。」

ただ私は暗殺者。だから、私と接触したとしても出会ったその場でお別れがほとんどだ。護衛任務やら例外も数多くこなしてるから会った事のある誰かから、という可能性は否定できないけど。


「名前、気をつけなさいよ。あなた、蜂蜜みたいな子なんだから。」

「……蜂蜜?」

ミツバチは、女王に差し出すために甘い蜜を集める。女王が命じるままに蜜をいっぱい巣に持ち帰る。

「そう。その甘い香りに引き寄せられる人は後を絶たない。」

「上手いこと言うね。じゃぁ、俺はカブトムシ…いやクワガタかな?俺は女王蜂って柄ではないからね。」

「カブトムシでもクワガタでもどっちでもいいです。
とにかく誰かに、いつ想いを寄せられてもおかしくないってこと。」

「仕事が絡めば、恋も愛もないと思うけど…」


「恋や愛だけじゃ言い表せられない想いだってあるでしょう。」


友情・恋情・愛情、それにまだ名付けられてない気持ち。想いの形は数え切れないほどある。


「ただお前に会ったら目を奪われちまうのは分かる気がする。」


「ほらね。スクアーロ様もそう言っているじゃない。」


「ちょっと待ってよ。スクアーロもライバルなのかよ。」

話が反れてしまい騒いでいる颯は放っておいて、名前は何やら考え込んでいた。


「何か心当たりがあるような面だなぁ。」

「ないよ。……全く心当たりがないから変な気分。」


私は女王蜂に捧げられる甘い蜜なのだろうか。自分にそんな価値があるだなんて到底思えずにいた。


「知らないとこで厄介ごとに巻き込まれるのは勘弁してもらいてぇよな。」

「そうだね。さっきスクアーロが言ってたみたいに、正々堂々と現れてくれたらこんなに考え込まなくて済むのに。」
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