Hello good-bye
「穏やかだな。」
「そうだね。拍子抜けしちゃうくらい。」
あの慌ただしかった日々が終わって早2ヶ月が経った。任務やら何やらで相変わらず忙しく過ごしてはいるが、取り戻した今の生活はすごく満たされていた。
「お前が3年も留守にしてたなんて信じられねぇよ。」
「そうだね。私もあんまり実感ないかも。」
だけど、スコープではない場所で過ごした時間が私の中にはある。辛い思いをしたこともさせたこともあった。怒りを向けるべき相手だった颯とエレ。今もその前も彼らのことを憎むことはできなかった。嫉妬や独占欲は少なからず誰もが持つ感情だ。育ってしまったそれらが大切にしたい相手に牙を剥いてしまったとしても、元は一途な想い。怒りをぶつければその想いを踏みにじることになる気がした。それに思いやる気持ちはあっても遠ざけたいとは不思議と思わなくて。最終的には彼らと良い関係を築くことができてとても嬉しかったりする。
「何百面相してんだよ。しんみりしてたと思ったらニヤニヤしやがって。」
「失礼ね。これはニヤニヤしてるんじゃなくて微笑んでるの!そんな違いも分からないんじゃ、右腕失格なんじゃない?」
「なっ…今は右腕とか関係ねぇだろ!!」
「はいはい、そうでしたね。」
短気なのはいつまでたっても変わらないなぁ、なんてしみじみ思ってみる。また百面相って言われそうだから、表情には出さないように気を付けよう。
「今度は何考えてんだよ。」
「何にも。」
「嘘つけ。顔見りゃわかんだよ。幼なじみなめんじゃねぇ。」
「あはは。やっぱり隼人には隠せないか。」
当たり前だと言わんばかりな表情になる隼人。身長だって出会った頃より随分伸びて、どんどん大人っぽくなっていく様子を近くで見ていた。だけど変わらない部分もたくさんあって、それを見つけるたびに安心するんだ。何でもかんでも伝わってしまうから困る時もいっぱいあるけど、妙に心地好くて。
「当然だ、バカ。」
バカって言われるのはちょっと心外だけど、愛情の裏返しだと思っておこう。これが私たちのスタイルだから。
「さてと、そろそろ戻ろうかな。これから任務なんでしょ?」
「あぁ。」
言葉がなくても伝わる環境に慣れてしまったから、いけなかったのかもしれない。誰に対しても通じるわけないって知っていたはずなのに。
口に出さなくちゃ伝わらないモノが世界には溢れていた。
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