輪郭をつかむ


相手を把握しない事には始まらないって言われたから、第一段階としてボクの登場ってわけ。子どもだから、油断させやすいとかなんとか言ってたけど。ボクは子どもなんかじゃない。


一台の車が近づき、ボクのそばで止まる。その中から一人の男の人が降りてきた。


「なぁ。ここに何か用か?」


任務が終わり、本部に帰ってきた山本は、ボンゴレの広い敷地に続く門の前に佇む男の子に声をかける。


「……」


早速引っ掛かった。これを逃す手はないよね。


「聞いてるか?」


小さな男の子の目線に合わせるように屈みながら優しく話しかける。


「聞こえてるよ。すっごく大きくて立派な門だから見てたの。」


オプションで目をキラキラさせる。計算高いんじゃないよ?お仕事には欠かせないボクなりの技なの。


「あはは、難しい言葉知ってるんだな。奥にある屋敷も立派なんだぜ。関係者以外は立ち入り禁止だから、見せられねぇけど。」


少し困ったようにボクの頭をわしゃわしゃ撫でる目の前の男の人。別に残念じゃないよ?情報がぜんぜんないわけじゃないから、ある程度は知ってるし。


「じゃぁお兄ちゃんは関係者なんだね。すごいなぁ。」


「あぁ。まぁな。だけどすごかないさ。」



その時遠くからボクを呼ぶ声と、走る音が聞こえてきた。


「あっ。」


「どうかしたのか?」


あれ、と男の子が指さす先には長身の男性。


「勝手にいなくなっちゃダメだろ。」


「ごめん、パパ…」


「迎えに来てくれてよかったな。」


本当に優しい人じゃなければ、こんな風に喜んでくれない。


「お世話になりました。ほらお前もお礼を言いなさい。」


「ありがと、お兄ちゃん。」


「どういたしまして。もう迷子になるなよ。」


その言葉を最後に男の人は、車に乗り込み門を開けて中に入っていってしまった。


―――――


『パパ』の肩はボクの定位置なので、そこにすっぽり納まる。


「雨の守護者、か?」


「うん。強くてやさしい雨の人。噂どおりカッコ良かったね。」


だけど鋭かった。難しい言葉を使えば『侮れない人』だね。


「お前さ、イケメン目の前にしてそれ言うか?」


むにっと柔らかい頬を摘まんでみる。


「ほっぺが伸びちゃう!それにパパがカッコ良いのは知ってるもん。」

「よくできました。これくらいじゃ伸びねぇよ。
それにしても、演技上手じゃねぇか。スパイでもイケそうだ。」


「当たり前でしょ!これくらい出来なくてどうするの。」


それにもうこれはスパイみたいなものだよ。


「まぁな。
とりあえず接触は無事成功っと。パパって言うから面食らったぜ…」


「だって親子設定だったから。パパンって呼ぶのは控えたんだから、感謝してよね。」


ぷくっと頬を膨らませて拗ねる。
ボクだって立派なメンバーなんだよ。それに大切なお姉ちゃんにまた会いたいんだ。あの人と同じくらい会いたい。


「拗ねんなって。」


少しヒヤヒヤしたぜ。雨の守護者の山本武とか言う奴、半端なく鋭い。
天性のものなんだろうな。さすがの俺もバレるかと思った。


「さっ。いつまでもここにいたら怪しいぜ?」


「ずっと雨のお兄ちゃん待ってたから、お腹すいた!」


「はいはい。じゃぁ帰りますか。」


「うん!早く早く!!」

「おまっ。分かったから、暴れるな。」


―――――


「アイツら何者だ?」


独り言のつもりで呟けば、後から思いがけない返答が聞こえてくる。

「深入りしない方がいいぞ、山本。」


「小僧…」


「ただの迷子とその父親、だ。それ以上でもそれ以下でもねぇ。」

「そう…だな。」


不服そうな顔をしながらも去っていく山本の背中を見送った。



「動き出したのか?もしそうならまずいことになるぞ…」




お姉ちゃんにつながるならボクは頑張れる。お姉ちゃんの前でだけ、ボクは本当の意味で無邪気になれるって気付いちゃったから。
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