shortshort
2018.06.12 Tue 17:33
過去拍手文でーす。

‡─────────────‡

「おーい、其処でしかめっ面してるお二方ァ」

声に振り替えれば、其処には何やら紙袋を両手に抱えた沖田の姿。

「……………おい、仕事はどうした総悟」

「どうにかしやした」

顔を引きつらせる土方に構わず、彼の隣で黙々と本を読んでいた少女に声を掛ける。

「食欲の秋ですぜィ、んなことしてたら体腐っちまう」

「隊長、読書の秋ですよ、食べてばっかじゃ豚になります」

「豚は土方とメスだけで充分でさァ」

「誰が豚だァァ!!」

言い争っていれば、何やら焦げた臭いがしてきて。


「……………燃えてる?」

「あ、焼き芋用でさァ」

青い顔になって勢いよく立ち上がりかけた土方を引き止めたのは、そんな沖田の言葉で。


「てンめェ…………何勝手な事してんだァ!!」

「さーさー土方さん、こいつと二人で仲良く豚になってくだせー」

「副長と一緒は嫌です」

「何気に失礼な事言ってんじゃねェ!!」

土方が沖田を追いかけ回す中、山崎が何かを持って少女の元へ。


「焼き芋焼けましたんで、食べませんか?」


成る程。

沖田が抱えていた紙袋の中にはさつま芋が入っていたのか。
と、呆然と納得する。


「じゃあ、一つだけ」

頂きます、と口にした芋はやたら熱くて。

「あ、ずりィ俺も食う」


悪戦苦闘しながら焼き芋を頬張っていると、隣に沖田が現れる。
一体土方はどうしたのだろうか。そう、少女が思っていると。


「頂きー」

あっという間に、手に持っていた焼き芋をかじられる。

「あ、待っ、」


それ熱いですよ?


言おうとしたが時既に遅し。


あまりの熱さに沖田は目を潤ませ、口を押さえてしゃがみこむ。


「─────!!!」

あっつい!!


漸く放たれた声は見事なまでの悲鳴。

「急ぐからそういう事になるんですよ?」


舌を火傷したらしい。

苦々しい顔で呻く沖田に目を向け、焼き芋をずいっとつき出す。

「……………へ?」

「かじったなら、全部食べてください」

きょとりとした顔をした後、沖田はにやりと笑い。

「てめェが食え」

「……………へ?」

焦る少女を無視して、沖田が口に無理矢理に突っ込む。
冷めてきていたそれは、熱くは無かったけれど。


「────お、お、沖田隊長ー!!!」


真っ赤になった熱い顔で、少女は沖田を追い掛けるのであった。
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