あの人はいつも
無理をしていた
あの人はいつも
自分を傷つけていた
あの人はいつも
耐えていた
あの人はいつも
抑え込んでいた
あの人はいつも
苦しみと対峙していた

強くて深くて哀しくて
儚げで綺麗で優しくて
誰かを背負っていた

彼女はいつも
甘えている
彼女はいつも
傷つけている
彼女はいつも
ぶつけている
彼女はいつも
泣いている
彼女はいつも
苦しみから逃げ出そうとする

背負わせて追い詰めて
切り刻んでかき集めて
虚言の鎧を固く閉じて
その隙間から毒の棘を吐き出して
被害者面して涙声で
行き場を失ったあの人の
優しい嘘に安心していた

終わりにしよう 夢物語
絶望も見慣れれば可愛いさ
騙されたと思って触れてみたらいい
意外と居心地いいものでしょう
色褪せたページ破り捨てて
真っさらなノートに
一文字目を書き込んでみて

“私――”

彼女の彼女による彼女のためのお話
さあ、はじまり はじまり





091027


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