ここから連れ去って
私を切り離してください。
絡み合う糸から
繋いだ指から
溶け合った体から
消えてしまいたい。
哀しむ顔は見たくないから
初めから無かったものとして
私の存在自体そのものを
どうか消し去ってください。
そうすれば心痛める人が
一人は減らせるはずだから。
あなたとの甘い夢も、
いつか出会う小さな夢も、
徒労に終わる期待を
味わわなくて済むように、
どうかお願いですから
私を今すぐ消してください。
消えてしまったその後は
出来ることならば
大気に溶けて空を漂い
終わりを見届けたい。
あの人生もこの人生も
あの歌も このお話も
未だ諦め切れずにいます。
例えば夜にだけ笑える
満点の星の一粒でもいい。
或いは忌み嫌われる
死霊の類でも構わない。
せめてあの人の終わりだけ
ただ見つめることだけを願う。
全うに幕が降ろされたなら
後は煮るなり焼くなり
どうぞお好きになさって。
私の体なぞ旨くはないが
望むなら血となり肉となり
働くことを拒みはしない。
全て役目を終えた魂、
老いさらばえもせず死んだ肉体、
荒んだ地獄の片隅で
ただ腐敗を待つよりも、
取り込んで 飲み込んで
咀嚼して 消化して
何方かの命を繋げたなら、
そのときやっと
私は私の存在を許せるでしょう。
091004